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イチョウハクジラの全体像/ Credit: ja.wikipedia
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幻の鯨「イチョウハクジラ」の生存個体を初めて確認

2025.11.24 12:00:34 Monday

これまで世界中の専門家でさえ、その“生きている姿”を見たことがないとされていた幻の鯨がいます。

その名は「イチョウハクジラ(Mesoplodon ginkgodens)」です。

彼らの存在を暗に示すのは座礁した死体と、深海から響く正体不明のエコロケーション音だけでした。

しかし最近、米オレゴン州立大学(OSU)は、メキシコ・バハカリフォルニア沖での大規模調査で、ついにイチョウハクジラの生存個体を世界で初めて海上で確認したのです。

研究の詳細は2025年7月28日付で科学雑誌『Marine Mammal Science』に掲載されています。

Scientists find rare tusked whale alive at sea for the first time — and shoot it with a crossbow https://www.livescience.com/animals/whales/scientists-find-rare-tusked-whale-alive-at-sea-for-the-first-time-and-shoot-it-with-a-crossbow
First At-Sea Identifications of Ginkgo-Toothed Beaked Whale (Mesoplodon ginkgodens): Acoustics, Genetics, and Biological Observations Off Baja California, México https://doi.org/10.1111/mms.70052

深海に響く「謎の声」を追って、5年にわたる探索

イチョウハクジラはアカボウクジラ科 に属する体長4〜5メートルほどの小型クジラです。

しかしその生態のほぼすべてが謎に包まれてきました。

これまで座礁と混獲でしか記録がなく、生きた個体を海上で誰も見たことがなかったのです。

過去に、台湾沖やニュージーランド沖で生きた個体が観察されたとの報告がありますが、科学的に断定されたわけではありません。

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イチョウハクジラの全体像/ Credit: ja.wikipedia

研究者たちがこの幻の鯨の探索を本格化させたきっかけは、北太平洋で録音された謎の超音波でした。

それは「BW43パルス」と呼ばれ、特徴的な周波数構造と短いパルス長を持つ反響定位音(エコロケーション)です。

しかしどの種のクジラが発しているのか、判明していませんでした。

2020年から研究チームは、バハカリフォルニア沖でこの“謎の声”の主を探し続けました。

船の後ろに長い水中マイクを装備し、さらに海にドリフト型の水中録音ブイを展開して、深海からのパルスを拾い続けました。

ところが、記録されるのは姿を見せないクジラの信号ばかり。

目で見える場所には現れず、深い海の暗闇でわずかな音だけを残す……イチョウハクジラはまさに「実体のない鯨」でした。

研究者の一人は論文中でこう記しています。

「イチョウハクジラは地球で最も“知られていない動物”の一つです」

深海に隠れ、長時間潜水をくり返し、音も小さい。

追跡は困難を極めました。

しかし2024年の調査で、過去の音響記録をもとに最も可能性が高い海域を集中的に調べた結果、ついに“その瞬間”がやってきます。

次ページ世界初「生きた個体」の撮影・DNA採取に成功

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