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※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
history archeology

メキシコで4000年にわたり描き継がれてきた「ロックアート」を発見

2025.11.28 22:00:25 Friday

テキサス州南西部からメキシコ北部にかけての峡谷地帯には、かつて「謎の巨大壁画」と呼ばれたロックアートが数多く残されています。

高さ8メートルに達する人型の姿やシカ、ヘビ、抽象的な記号が驚くほど緻密に描かれ、まるで古代の精神世界をのぞき込んでいるかのようです。

しかし、これらの壁画がいつ描かれ、どれほど長く続いた文化なのかは、誰にも分かっていませんでした。

そんな中、米テキサス州立大学(TXST)の最新研究で、これらのロックアートは約6000年前に描き始められ、その後4000年間にわたって描き継がれていたことが判明したのです。

およそ175世代にわたり描き続けられていたとみられます。

研究の詳細は2025年11月26日付で学術誌『Science Advances』に掲載されました。

Dating a North American rock art tradition that lasted 175 generations https://phys.org/news/2025-11-dating-north-american-art-tradition.html
Mapping the chronology of an ancient cosmovision: 4000 years of continuity in Pecos River style mural painting and symbolism https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adx7205

数千年も描き継がれてきた壁画

今回研究対象となったのは、アメリカ・テキサス州南西部からメキシコ北部に広がる「ロワー・ペコス峡谷地帯」です。

この地域には、巨大な岩陰(ロックシェルター)が点在し、古代の人々が儀礼や日常生活の場として利用してきました。

ここで見つかった「ペコス川様式」と称される壁画は、赤・黒・黄・白などの色彩を巧みに組み合わせた非常に複雑な絵柄が特徴です。

驚くべきポイントは、その構図やモチーフ、色の塗り方が数千年にわたって変わらなかったことです。

チームは顕微鏡観察と層序解析を行い、壁画の色の重なり方を正確に記録。

すると、多くの壁画で「黒の上に赤」「赤と黒の上に黄」「さらに白を重ねる」という特定の手順が繰り返し使われていることが判明しました。

そして詳細な分析から、最も古いロックアートは紀元前3815年ごろに、最後のものは西暦900年ごろに描かれたことを特定。

つまりこの芸術伝統は約4000年間、換算するとおよそ175世代にわたり続いていたことになります。

【実際のロックアートの画像がこちら

さらに、同じ壁画に残された年代測定値はどれも近く、統計的に区別できないほど似通っていました。

これはつまり、大規模な壁画は数百年単位で描き足された寄せ書きではなく、ひとつの巨大儀礼として短期間で一気に描かれた可能性が高いことを意味します。

これほど大規模で精緻なアートが、世代を超えて同じルールで制作され続けていたという事実は、古代人の精神性や宗教観が驚くほど安定していたことを示しています。

次ページメソアメリカ文明にもつながる“始まりの神話”の形

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