細菌版たまごっち!?発光細菌を育てる小型バイオリアクター
1990年代に登場したたまごっちは、ミニサイズの画面といくつかのボタンを使って“デジタルの命”を育てるゲームでした。
餌を与える、掃除する、機嫌をとるといった行動はすべてボタン操作で行われ、世話を怠ると画面上でキャラクターが死んでしまうという仕組みは、多くの子どもに「責任」を教えました。
大人たちだって熱中したはずです。
しかし SquidKid は、そのルールを バーチャルではなく本物の生命へと適用した 点でまったく新しい概念を提示しています。
この SquidKid は、見た目にも特徴があります。(画像はこちら)
玩具は 小さなイカの姿を模した愛らしいデザインで、頭部の内部には細菌の入った液体が満たされています。
短い触手がいくつか付いており、そのうち1本は押すと空気を送り込める “酸素ポンプ” として機能します。
このように見た目は可愛いキャラクター玩具ですが、内部は本格的な 小型バイオリアクター になっているのです。
この SquidKid の中で暮らすのが、海洋細菌 Allivibrio fischeriです。
この細菌は特定の条件がそろうと青緑色に光る性質を持っていますが、重要なのは 「1匹だけでは光らない」 という点です。
細菌たちは互いに“化学信号”を出し合い、その濃度が一定以上に達したときに、ある酵素を作り、生物発光を始めます。
この現象を クオラムセンシング と呼び、細菌が「仲間の数」を判断して行動を変える仕組みとして知られています。
そして細菌が光り続けるには、いくつかのケアが不可欠であり、子どもがSquidKidで行うべきことは次の三つです。
- 栄養(ブロス)を補充すること
- おもちゃを優しく揺らして撹拌すること
- 触手ポンプを押して酸素を送ること
どれか一つでも欠けると細菌の状態が悪化し、光が弱くなってしまいます。
つまり SquidKid は、ボタン操作で行っていたたまごっちの「世話」を、現実の生命維持活動に置き換えた玩具なのです。
ちなみに、 SquidKid のデザインモチーフとなったイカ「Euprymna scolopes」 は、自然界で Allivibrio fischeri と共生しています。
このイカは腹部に発光細菌を住まわせ、夜間に海底へ映る自身の影を消すために利用しているのです。
SquidKid は、この共生関係の仕組みを家庭に持ち込む“教育装置”でもあります。
では、SquidKid を遊ぶ子供たちには、どんな影響があるでしょうか?

























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