古い白熱電球と最新グラフェン炉の意外な共通点

白熱電球のスイッチを入れると、フィラメントがオレンジ色に光り、やがて切れてしまう――そんな「古い照明」のイメージを、多くの人が共有していると思います。
トーマス・エジソンは1879年に長時間安定して光り続ける白熱電球を発明しました。
当時の電球は現在のものと異なり、フィラメント(細い発熱体)に炭素素材が使われていました。
たとえば京都八幡産の竹を炭化させたフィラメントなどが利用され、真空中で白熱させることで最大約1200時間連続で点灯できる電球が実現したのです。
LEDや有機ELが主役になった現代では、白熱電球は少しレトロな雑貨という位置づけかもしれません。
コラム:エジソンと日本の竹
1879年エジソンが作成した「電球」は、綿糸を炭にしたフィラメントを使った炭素電球で炭化した綿の糸が約13〜14時間ほど光り続けたと報告されています。しかし、家庭や工場で本格的に使うには、十数時間ではまだ足りません。エジソンのチームは「もっと長寿命で、しかも作りやすいフィラメント」を求めて、世界中の植物や素材を炭にしては試すという、気の遠くなるような実験を繰り返しました。その旅路の果てにたどり着いたのが、日本・京都の八幡で採れた竹でした。
ここで採れる「八幡竹」は、繊維がぎゅっと詰まっていて、しなやかで折れにくく、炭にしても形が保たれやすいという特徴があります。実際に炭化した八幡竹のフィラメントは、なんと約1200時間、連続で光を出し続けたと紹介されています。こうして「日本の竹フィラメント電球」は、タングステンなどの金属フィラメントが登場するまでの約10年間、世界中の家庭や職場を照らす主力として使われることになりました。
一方、21世紀においては同じ炭素を材料にした「グラフェン(原子1枚ぶんの薄さの炭素シート)」という素材が、強くて軽くて電気もよく流れる“奇跡の素材”として注目されています。
グラフェンは1960年代にその性質が実験的に報告され、2004年にテープではがす実験で単層が取り出され、2010年にはノーベル物理学賞にもつながっています。
では、そのグラフェンがどのように作られるかというと、代表的な方法のひとつが「フラッシュ・ジュール加熱(Flash Joule Heating)」です。
これは炭素を含む粉末などに一気に電流を流し、2000〜3000度という超高温に瞬間的に持ち上げて、炭素の並びを組み替えてしまう技術です。
ここで研究者たちはあることに気づきました。
エジソンのカーボンフィラメント電球も、竹を炭にした糸に電圧をかけて1800〜2300度という高温まで一気に加熱する装置だったのです。
つまり「古い白熱電球」と「最新のグラフェン炉」は、実はかなり似た条件で動いていた可能性があります。
そこで今回の研究者たちは、「エジソン式電球をそのままフラッシュ・ジュール加熱装置だと思って再現したら、本当にグラフェンができるのか」を確かめることにしました。
もしそれが本当なら、19世紀の電球の中で、最新ナノ材料がひっそり生まれていたことになるのでしょうか。


























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