「宇宙が膨張してる」のではなく「物質世界が縮んでいる」とする新理論が発表――なんと観測データとも整合
「宇宙が膨張してる」のではなく「物質世界が縮んでいる」とする新理論が発表――なんと観測データとも整合 / Credit:川勝康弘
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「宇宙が膨張してる」のではなく「物質世界が縮んでいる」とする新理論が発表――なんと観測データとも整合

2026.01.30 21:00:55 Friday

私たちは学校で、「宇宙はビッグバンからずっと膨張しつづけている」と習います。

銀河どうしの距離はどんどん離れ、宇宙という“ゴム風船”がふくらんでいる、というイメージは、多くの人にとっておなじみの宇宙像になっています。

しかしアメリカのクエスト・サイエンス・センター(Quest Science Center)で行われた研究によって、「宇宙が膨張している」のではなく「物質世界が縮んでいる」という理論が数式化されました。

研究では、原子の大きさや時間の刻みなど、物質の世界のスケールだけがビッグバン当初から今までの期間に3〜4割ほど小さくなったとすると、最近の宇宙観測が突きつけているいくつかの謎――「ハッブル定数の問題」や「ダークエネルギーの変化の問題」――などが、ひとつの「縮む物質世界モデル」でまとめて説明できる可能性が示されています。

もし単なる理論の提示だけなら疑う人もいるかもしれません。

しかし今回の理論は観測データとの整合性もチェックされており、非常に魅力的と言えます。

もし本当に、広がっているのは宇宙空間そのものではなく、私たちの側の物差しと時計のほうだとしたら、私たちが見ている「膨張宇宙」はどんなふうに見直されることになるのでしょうか?

研究内容の詳細は2026年1月20日に『Preprints.org』にて発表されました。

Scale Corrections to the ΛCDM Model to Explain a Time-Dependent Dark Energy Density, and the Hubble and S8 Tensions https://www.preprints.org/manuscript/202601.1548

観測精度が上がるほど見えてきた宇宙論のほころび

観測精度が上がるほど見えてきた宇宙論のほころび
観測精度が上がるほど見えてきた宇宙論のほころび / Credit:川勝康弘

私たちが学校で習う宇宙の姿は、とてもシンプルです。

宇宙はビッグバンという超高温・超高密度の状態からスタートし、そのあとずっと膨張を続けている、と説明されます。

よく使われるたとえは「ゴム風船」です。

ゴム風船の表面にいくつか点を書き、風船をふくらませていくと、点と点の間の距離はどんどん大きくなっていきます。

点そのものは風船の表面を動いていないのに、風船が伸びることで、あたかも点同士が遠ざかっているように見えるわけです。

宇宙も同じで、「銀河が空間の中を飛んでいる」のではなく、「空間そのものが伸びている」と考えるのが、いまの主流の説明です。

宇宙が本当にどれくらいの速さでふくらんでいるのかを表すために、研究者たちは「ハッブル定数」という数値を使います。

ところが近年、観測の精度がどんどん上がるにつれて、このハッブル定数を求める方法によって「答えが少し違う」という問題が目立つようになってきました。

「昔の宇宙」を手がかりに求めた場合と、「今に近い宇宙」をもとに求めた場合で、はっきりとした食い違いが見つかってきたのです。

「宇宙背景放射」など大昔(初期宇宙)からハッブル定数を推定するとある値が出てきます。

一方で、私たちの近くにある銀河や超新星を直接観測して「今この瞬間の膨張のしかた」を測ると、そこから導かれるハッブル定数はそれより少し大きい値になります。

この食い違いは「ハッブル定数の緊張」と呼ばれ、ざっくり言えば一割ほどの差がありそうだと言われています。

「誤差の範囲」と片付けるには、そろそろ苦しくなってきたレベルのズレです。

似たようなズレは、宇宙の「ボコボコ具合」を表す指標でも見つかっています。

宇宙には銀河や銀河団、ダークマターがつくる巨大な泡構造など、さまざまなスケールの「かたまり」が存在します。

重力で物質がどれくらいまとまっているかを表す指標だと思ってください。

その「どれくらい凸凹しているか」をまとめた量のひとつが、S8(エスエイト)と呼ばれる指標です。

初期宇宙からの推定値と、現在の宇宙を重力レンズなどで直接測った値を比べると、やはり約1割の差があり、後者の方が小さいことがわかっています。

本来なら時間がたてばたつほど重力で物質は集まりやすくなるはずなのに、観測では「思ったほど集まっていない」ように見えるのです。

さらに追い打ちをかけるように、DESI(デジ)という巨大な観測プロジェクトの最新結果が追加されました。

DESIは、宇宙にある多数の銀河や銀河団から届く光の波長を測り、その距離や動きを統計的に調べることで、宇宙がこれまでどのような速度で膨張してきたのかを再現しようとする計画です。

その解析から、「ダークエネルギーの強さが、時間とともに少しずつ弱くなってきているように見える」という傾向が報告されました。

本来、ダークエネルギーの正体が「真空のエネルギー」であるなら、その密度は時間がたっても変わらないはずです。

もしこれが本当なら、「一定の宇宙定数」というΛCDMの前提が揺らぐことになります。

こうした観測上の“モヤモヤ”に加えて、もっと根本的な理論上の悩みもあります。

量子論に基づいて計算すると、「真空のエネルギー」は、観測されるダークエネルギーよりも10¹²²倍も大きくなってしまうという、途方もないギャップ問題も古くから知られています。

宇宙がどんどん膨張して空間の体積が増えていくと、そこに満ちているダークエネルギーの総量も増え続けることになり、「エネルギー保存の考え方とどう折り合いをつけるのか?」という疑問も生まれます。

このように、膨張する宇宙の標準モデルは、多くの部分では非常によく働いているものの、細部をのぞき込むと、あちこちに小さな不一致が見つかり始めています。

ハッブル定数、S₈、ダークエネルギーの時間変化、真空エネルギー問題――これらは別々の“トラブル”のように見えますが、もしかすると同じ根っこから生えているのかもしれません。

そこで研究者たちは発想の転換を行い「宇宙が膨張しているのではなく、私たちの物質世界が縮んでいる」と解釈することで、これら問題が解決できるかを調べることにしました。

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