魚を吐くまで追い詰めゲロを出させる

海水浴場や観光地で、手に持っていたパンやおにぎりをトンビにさらわれた。
そんな場面に出くわした人は少なくないはずです。
「トンビに油揚げをさらわれる」ということわざがあるように、他人の獲物を横からかすめ取る行動は、昔から身近なものでした。
動物の世界でも、ほかの動物が捕まえたエサを奪う「横取り(労働寄生)」は珍しくありません。
なかでも名手が多いのが海鳥です。
たとえばグンカンドリは、ほかの海鳥を空中で追い回し、くわえた魚を落とさせたり吐き出させたりして自分のものにすることで知られています。
ところが水中ではその一部始終を見届けるのが難しく、イルカやクジラの仲間では詳しい記録がほとんどありませんでした。
そこで研究チームが注目したのが、グレートバリアリーフ南部のレディ・エリオット島で見られる、奇妙な追いかけっこです。
主役は、地元で「バブルス」と呼ばれるオスのハンドウイルカでした。
少なくとも2017年から島の周辺に現れ、アジの仲間を繰り返し追い回すことで知られていました。
論文の筆頭著者で、サンシャインコースト大学の博士課程に在籍するロムニー・エドワーズ=フランシス氏らの研究チームは、水中映像などを集め、バブルスが魚を追ったあとに何をしているのかを調べました。
集まった映像には、バブルスがアジの群れに挑む場面が20回記録されており、そのうち11回は、アジが吐いたものをバブルスが食べるところまで映っていました。
相手は、小魚を食べるアジの仲間、ギンガメアジです。
バブルスの狩りは、毎回ほぼ同じ手順をたどります。
最初は「品定め」です。
バブルスはアジの群れのそばを鋭くターンしながらゆっくり泳ぎ、頭を左右に振りながら、カチカチというクリック音を出します。
イルカは、自分が出した音がものに当たって跳ね返ってくる響きで、周りの様子を探ることができます(反響定位、エコーロケーション)。
この首振りは、群れの中から狙う1匹を探している動きだとみられています。
やがて頭の動きがぴたりと止まり、1匹のアジにだけ向けられます。
ここからバブルスは、すぐそばを泳ぐほかのアジには目もくれず、その1匹だけを追いかけます。
スピードを上げてぴったりと後ろにつき、アジが右へ曲がれば右へ、左へ切り返せば左へと、その動きをそっくりなぞるように追い続けます。
そしてついに、追い詰められたアジが胃の中のものを吐き出し、バブルスは吐き出されたものを食べてしまいます。
しかしなぜバブルスは、わざわざ吐瀉物を食べるようになったのでしょうか?






























