腸内細菌叢は脳より古い起源をもっている
今回の研究により、ニューロンの謎に包まれていた起源が、消化システムを制御する細胞(ニューロイド)から派生した可能性が示されました。
ニューロイドで同じような遺伝子が働いているだけなく、ニューロンのシナプスにソックリな接合部を持ち、同じ神経伝達物質を分泌し、細菌叢の維持にもかかわっていました。
神経系が存在しない海綿動物の消化システムでみつかったニューロイドは、その類似性から、後のニューロンの原形であり、ひいては神経系や脳の起源となったと考えられます。
そして腸内細菌などの共生細菌の存在は脳にとって、自分の親である腸と友誼を結んだ、古株のオジキ的な存在と言えるでしょう。
脳が腸内細菌の指令を受けて活動を変化させるのも、進化の過程をみれば納得できます。
ただ全てのニューロンがニューロイドを起源にしているかまでは、断定できません。
いくつかのニューロンは消化システムの制御機能よりも、筋肉細胞のほうにより多く一致する部分があるからです。
研究者たちは今後、海綿動物の細胞を分析することで、神経系の複雑な起源を解明できると考えています。
生命の進化過程の探求は今後も、豊かな思考の糧を与えてくれるでしょう。
※この記事は2021年11月公開のものを再掲載しています。