菌類を利用して甘酸っぱい野イチゴの香りが生成される
菌が繁殖した後、チームは発酵した材料の香りを1つずつ確認していきました。
その結果、菌の種類によって、フルーティー系、ハーブ系、トロピカル系、麦芽系、カビ臭いもの、金臭いものなど、さまざまな香りが生まれました。
ツォーン氏によると、「いくつかの香りは本当にひどいものでしたが、中には心地よく高評価できるものが見つかりました」と述べています。
そしてその中には、甘酸っぱいイチゴの香りも含まれていました。
この香りはカシス(またはクロスグリ)の搾りかすと、マツホド(学名:Wolfiporia extensa, またはWolfiporia cocosとも言われる)という漢方薬に利用される菌類の組み合わせで生まれたようです。
次にチームは、この香りを引き起こしている化合物を特定することにしました。
その結果、(R)-リナロール、アントラニル酸メチル、ゲラニオール、2-アミノベンズアルデヒドなどの4つの化合物の組み合わせが、甘酸っぱいイチゴの香りの正体だと判明。
そしてこれらの化合物はすべて、野イチゴであるワイルドストロベリーに含まれていました。
新しく見つかった香りは、単なるイチゴの香りではなく、野イチゴの香りだったのです。
さらにチームは、これらの化合物を人工的に合成して、「野イチゴの合成香料」を作成することに成功しました。
その合成香料からは、「野生に生育している野イチゴの自然な香りがした」と報告されています。
さて本物の野イチゴは、森の中でたくさん入手することが難しく、一粒一粒を香料に利用するのは効率的ではありません。
つまり野イチゴの香料は非常に珍しいのです。
現在、「野イチゴの香り」の特許はすでに企業によって買収されています。
今後は大量生産され、「野イチゴのナチュラルフレーバー」として食品などに利用されていくかもしれません。