太陽風と火星磁気のアーティストイメージ
太陽風と火星磁気のアーティストイメージ / Credit:NASA/GSFC/Greg Shirah and Ernie Wright and Walt Feimer and Michael Lentz and Chris Smith
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「テラフォーミングされた火星」を人工磁場で守る!?壮大な計画

2021.11.26 18:00:49 Friday

映画でもアニメでもネタにされるように、火星には非常に地球に近い部分があり、現在もっともテラフォーミングの可能性を持つ惑星です。

ただ、当然のことながら、現在の火星には地球と異なり大きく不足しているものがあります。

それが磁場の存在です。

火星はかつて地球同様に水を含んだ豊富な大気を持っていましたが、強力な磁場がないためにそれはどんどん吹き飛ばされてしまいました。

そこで火星を人工的な磁場で保護する研究が進められていますが、今回オックスフォード大学の研究チームが発表したのは、火星の月フォボスを利用して火星の周りに磁気のリングを形成させるという、かなりとんでもない計画です。

研究の詳細は、11月12日付でプレプリントサーバー『arXiv』に発表されています。

An Absolutely Bonkers Plan to Give Mars an Artificial Magnetosphere https://www.universetoday.com/153368/an-absolutely-bonkers-plan-to-give-mars-an-artificial-magnetosphere/
How to create an artificial magnetosphere for Mars https://arxiv.org/abs/2111.06887

火星テラフォーミングの障害となる太陽風

太陽風は太陽から飛ばされてくる荷電粒子(プラズマ)の風です。

この規模が大きいものは太陽嵐と呼ばれていて、地球にとっても危険な災害としてよく特集されるので知っている人も多いでしょう。

普段地球で太陽風の影響が問題にならないのは、地球が強力な磁場によって太陽から飛来する荷電粒子から守られているためです。

この磁気圏のシールドがない場合、太陽風は惑星の大気などを宇宙空間へ吹き飛ばしてしまいます。

火星はかつて、地球同様に豊富な水と大気を持っていたと考えられていますが、それが失われた原因は、火星に強い磁場がなかったためだと考えられています。

火星と地球の太陽風の影響。地球は磁場に守られているため太陽風は惑星の上層大気まで届くことはない。
火星と地球の太陽風の影響。地球は磁場に守られているため太陽風は惑星の上層大気まで届くことはない。 / Credit:NASA,Greg Shirah and Ernie Wright and Walt Feimer and Michael Lentz and Chris Smith

そのため、もし人類の努力によって、火星を地球のような水と大気に満ちた惑星に戻せたとしても、太陽風の影響を防げなければ、結局はもとの荒野に戻ってしまうでしょう。

ただ火星に強い磁場を発生させるというのは容易なことではありません。

地球に強い磁場を生み出しているのは、コアに含まれた鉄合金の対流です。

火星の内部は温度が低いため、コアがそのような強い磁場を作れないのです。

シミュレーションされた火星と地球に影響を与えるコロナ質量放出の動画
シミュレーションされた火星と地球に影響を与えるコロナ質量放出の動画 / Credit: NASA GSFC/CIL/Bailee DesRocher

そこで科学者たちは、火星のテラフォーミングに関する研究と並行して火星を磁場で保護するための方法も研究しています。

火星に磁場を発生させる基本的なアイデアは、火星の地上や軌道上にソレノイド(電磁石)を配置して、惑星を磁気的に保護するというものです。

今回の研究者は、こうした方法の有効性を認めつつ、さらに大胆で大規模な解決策を提案したのです。

それが火星の月「フォボス」を使って磁気シールドを生み出すというものでした。

これは一体どういう計画なのでしょうか?

フォボスを使って火星の周りに荷電粒子のリングを作る

火星の衛星フォボスとダイモス
火星の衛星フォボスとダイモス / Credit:NASA/GSFC/MichaelLentz

火星にはフォボスとダイモスという2つの月があります。

今回着目しているのはこの2つの月のうち、火星に近い軌道を回る大きい月「フォボス」です。

火星を包む人工的な磁場を作ろうとした場合、火星の地上や軌道上に強い荷電粒子の流れを生み出す必要があります。

研究チームはその荷電粒子の流れを、このフォボスの表面の粒子をイオン化させ加速して放出することで、プラズマトーラスを形成するという方法を提案しました。

フォボスを利用して形成された荷電粒子トーラスは、火星に十分な磁場を与える可能性がある
フォボスを利用して形成された荷電粒子トーラスは、火星に十分な磁場を与える可能性がある / Credit:Ruth A. Bamford et al.,arXiv(2021)

フォボスは非常に火星に近い場所を回っていて、約8時間で火星を1周します。

そのため、フォボスの軌道に沿ってプラズマのトーラス(ドーナツ状の環)を形成するこの方法は、火星を保護するのに十分な強さの磁場を形成できる可能性が高いのです。

かなり大胆でとんでもない計画ではあり、技術的なハードルが高いことは確かですが、これはアイデアとして非常に興味深いものでしょう。

このアイデアを試すのはまだ先のことでしょうが、こんな風に火星を磁場で保護する方法もあるということは、知っているとSF作品を楽しむ際に役立つかもしれません。

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