キノコになりきれない粘菌たちの苦肉の策が円形を作った
なぜ家系を認識するタンパク質の過剰分泌が円構造を形成させるのか?
謎は深まるばかりですが、研究者たちは、粘菌の家系を認識するタンパク質が、粘菌細胞どうしの接着も使われている事実に着目しました。
キノコのような巨大な多細胞体を創り出すには、細胞同士が強く接着し、統一された動きをしなければなりません。
一方で、粘菌たちが飼育されていた培養皿は栄養が豊富でキノコを作るようなストレスもありません。
そのためキノコを作るような条件でもないのに、粘菌の家系を認識して接着するタンパク質を過剰分泌させた結果、粘菌たちはとりあえずの集合体として円形を形成したのだと推測されます。
つまり粘菌たちにとってゴッホの絵のような構造は、粘菌がキノコのような多細胞体に変化する中途段階ともいえるでしょう。
研究者たちはこの不思議な中途段階を研究することで、粘菌どうしの機械的なつながりや社会性を解明する手掛かりになると考えています。