「血のワシ」とは、どんな儀式なのか?
「血のワシ」に関する考古学的な証拠や、あるいはヴァイキング自身の記録は一切見つかっていません。
それが記録されていたのは、スカルド詩とサガの中の記述のみです。
スカルド詩とは、9〜13世紀ごろの北欧(特にスカンディナヴィアとアイスランド)で読まれた古ノルド語による韻文詩のこと。
サガ(サーガとも)は、中世アイスランドで成立した古ノルド語による散文作品群の総称のことです。
その方法はきわめて残酷で、まず、犠牲者を生きたまま台座の上にうつ伏せに寝かせます。
次に、鋭い刃物で背中を開き、脊椎から肋骨を切り離します。
そして、左右の肺を引きずり出し、まるでワシの翼のように広げるのだという。
その配置および、肺が最後にひらひらと動く様子が翼の動きに似ていることから、「血のワシ」と呼ばれるようになりました。
こちらは、スウェーデンのゴットランド島にあるヴァイキング時代の石碑で、上から3段目に「血のワシ」が図像が記されています。
拡大すると、このような感じです。
ただし、この儀式が文学上の作り話なのか、それとも本当にヴァイキングに伝わる慣習なのかは不明です。
専門家らの間では、何十年も「血のワシ」が伝説として退けられてきました。
これを実際にあったことと証明するのは、考古学的な遺物か、ヴァイキング自身の記述が見つからないかぎり不可能です。
そこでシカゴ大の研究チームは、別のアプローチから、つまり「血のワシは実行可能だったのか」という問いから調査しました。
そして導き出された答えは「イエス」です。