生命が示すリズム
生命の活動には、たいていリズムパターンがあることが知られています。
それは昼夜の明暗周期に関連した概日リズムも含まれます。
しかし、概日リズムを作り出す光の明暗の影響を切り離した場合でも、生物のリズムが維持されることがあります。
それは、目に見える要因以外に、何らかの生物のリズムを生み出す影響が存在していることを意味しています。
今回の研究では、甲殻類などの沿岸生物を自然の生息地から遠ざけた場合でも、潮汐サイクルに従った行動パターンが維持されるという問題を検討しました。
「これらの生物は、水環境が安定するよう制御された実験室に移動させても、太陰・太陽力学(月と太陽が生み出す潮汐力)に由来する約12.4時間の周期で、潮の干満に合わせた行動変化を維持させます。
このパターンは数日間維持され、生物が採集された場所での潮汐のタイミングと一致するのです」
研究者の1人、ブラジルのカンピーナス大学のクリスティアーノ・デ・メロ・ギャレップ( Cristiano de Mello Gallep)教授は、そのように述べています。
ギャレップ教授が、こうした影響について注目したきっかけは、自身の行った種子の発芽実験でした。
その実験では、種子の発芽に伴う自発光が観察されていましたが、そのリズムが実験ごとに異なっていました。
ギャレップ教授がこの原因を求めて、さまざまな文献に当たったところ、重力潮汐との相関を指摘する研究を発見したのです。
その後ぎゃレップ教授はさまざまな種子で試験を行い、チェコ・プラハやオランダのライデン、日本の浜松の共同研究者からも同様の現象を確認したという結果を受けました。
それにより、月や太陽が及ぼす重力サイクルが、生物に影響することが確認されたのです。
この影響は、甲殻類や植物の種子のような単純な生物だけに影響しているわけではありません。
暗闇に置かれた人間にも、月の周期と調和した24.4~24.8時間の周期的な変動が現れる傾向があるといいます。
それは、睡眠と覚醒の交換、食事時間、その他代謝機能に条件づけられているようです。
こうした影響は、洞窟の中で長く過ごした人間にも見られます。
生命のリズムは、昼と夜という目に見える影響だけでなく、海面などの変化でしか見ることのできない月や太陽のかすかな重力にも反応しているようです。
それは太陽系の地球で生まれ育ってきた生命であることの証なのかもしれません。