月と太陽が地球に与える影響
今回の研究の話題に入る前に、まず太陽と月が地球に与えている重力の影響についておさらいしておきましょう。
太陽と月を合わせた重力の力は、地球自体の重力の100万分の1程度しかありません。
しかし、その影響は無視できるほど小さいわけではなく、こうした力は潮汐力と呼ばれていて、月や太陽が地球を引っ張ることで、地球をひずませ、特に海面の水位を大きく変化させます。
潮の満ち引きは1日に2回起こりますが、これは月と地球の位置関係で発生しています。
また、太陽も月ほどではないにせよ、地球に重力の影響を与えています。
太陽の影響は月の半分程度だと言われていますが、月と太陽が直線状に並んだ場合、海水を引っ張る力も増すため、このときを「大潮」と呼びます。
また太陽が干潮差を弱めるように働く場合もあり、これは「小潮」と呼ばれます。
これらの話について、下記の記事でも詳しく解説しているので、興味のある人はそちらを参照してください。
海面を大きく変動させていることから、こうした月や太陽の重力作用は、必ずしも無視できるほど小さいものではないことがわかります。
実際、月と太陽の潮汐力は、地球の地殻にも影響していて、欧州原子核研究機構(CERN)の周囲27kmもある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、この重力変動の影響で1mmずつ垂直にずれてしまうため、実験者はそれに合わせて計算を修正する必要があるのです。
この1日2回の周期的な潮汐力の振動は、地球に生命が誕生してからずっと、変わらずに続いています。
地球生命は、こうした背景の中で進化してきたため、この影響が生命の活動パターンにも何らかの影響を与えている可能性は高いと考えられるのです。
しかし、多くの科学研究で、こうした事実は割と軽視されがちです。
例えば、照明などを調節し、外界の影響を遮断した状態で植物の成長を調査する際、月や太陽による重力的な影響のリズムを考慮していない場合があります。
もし、生命が潮汐力のリズムに影響を受けているとすれば、こうした実験は必ずしもすべての外界の影響を取り除いているとは言えなくなってしまいます。
そこで今回の研究者は、広範な文献のレビューと、重力の因果関係が十分に検討されていない3件の研究データをメタ分析(meta-analysis)することで、その影響を示そうとしたのです。