キツネのジャンプ狩りは「北向き」が多い
ぴょんと跳ねたキツネが、雪や草むらに鼻先をズボっと突っ込んでネズミなどの小動物を狩る「ジャンプ狩り(通称:マウス)」は、動物の生態を紹介する動画などでたびたびお目にかかります。
キツネは獲物の発する物音を感知すると、ゆっくりと音源に向けて近づいていき、間近に接近すると首を左右に振りはじめます。
首を振ることで左右の耳の上下位置をズラし、水平方向だけでなく垂直方向の位置把握が可能になるからです。
そして一定の距離になると、ジャンプして鼻先を雪や草にズボっと突っ込んで、獲物をゲットします。
そんなジャンプ狩りはこれまで、キツネの鋭い聴覚に全てが依存していると考えられていました。
しかし、チェコ生命科学大の研究者たちは、長年キツネのジャンプ狩りを観察するなかで、ジャンプ方向に奇妙な偏りがあることに気付きました。
例えば、西を向いた定点カメラに記録されたジャンプのほとんどは左から右(つまり南から北)であり、東向きに設置されたカメラではその逆の右から左(こっちも南から北)でした。
つまり、異なる地点で観測された異なるキツネであっても、ジャンプの多くが南から北に向けて行われていたのです。
そこで研究チームは、84匹のキツネで観測された600回あまりのジャンプ狩りを分析し、本当にジャンプ方向に偏りがあるかを調べました。
結果、キツネのジャンプ方向は確かに北方向に著しく偏っていることがわかったのです。
また、ジャンプ狩りの成功率を調べたところ、北方向(正確には北北東)に向けたジャンプを行った場合の成功率が74%である一方で、それ以外の方向に向かって行われたジャンプ狩りの成功率は18%未満であることが判明します。
さらに、ジャンプ方向は太陽の位置や季節(温度)などの影響を受けないこともわかりました。
加えて興味深いことに、ジャンプ狩りの北への偏りは、深い雪や高い草むらなどで顕著な一方で、獲物を直接視認できるような低い草地ではあまり見られませんでした。
この結果は、キツネが何らかの方法で地球の磁場を感知して、見えない獲物に対する攻撃手段として利用していることを示します。
どうやらキツネにとって北方向には、狩りの成功率を上げる「何か」が存在しているようです。
問題はその正体です。