Macintosh Portable(1989-1991)
日本ではワープロ専用機がパソコンよりも先に普及しており、1989年が出荷台数のピークでした。
実際、パソコンがワープロ専用機を打ち負かすのは2000年のことであり、当時はパソコンがゆっくりと広まっている段階でした。
この時にAppleから発売されたが、「Macintosh Portable」です。
ラップトップパソコン(昔のノートパソコン)であり、Macintoshシリーズに初めてバッテリー駆動とトラックボールを採用したものでした。
Appleは勇敢にも「ポータブル・コンピュータ」に挑戦したわけです。
ところが重量が7.2kgもあり、現代のノートパソコン4台分の重さでした。
しかもバッテリー設計が不十分で、実際の携帯性はほぼ皆無。
加えて不格好な外観と、標準価格116万8000円という一般ユーザーではとても手が出せない価格設定から、「失敗」の烙印を押されてしまいました。
当然、販売数も振るわず、わずか2年で生産終了になります。
Macintosh TV(1993-1994)
1993年にWindows3.1日本語版が発売され、日本国内ではWindowsの時代が始まろうとしていました。
また1995年にはWindows95が発売。パソコンの出荷台数が急増することになったのです。
さらにこの時代は地上波テレビの黄金期でもありました。
1993年には「ひとつ屋根の下」や「高校教師」などのドラマを楽しんだ人が多いでしょう。
そしてAppleはこの1993年に、テレビとパソコンを統合させたMacintosh TVを発売しました。
これはAppleにとって初の試みでしたが、当時人気のコンテンツを掛け合わせることで、大きな反響があると考えたのでしょう。
「1つのモニターをパソコンとテレビの両方で使用できる」という画期的なアイデアのように思えましたが、ユーザーにとっては「ただそれだけ」でした。
当時2000ドル(現在の3757ドルに相当。43万円ほどの価格)で販売されましたが、ほとんど売れませんでした。
出荷台数はわずか1万台であり、1年もたたずに製造中止になったのです。
QuickTake(1994-1997)
90年代はデジタルへの移行が徐々に進んでいた時代です。
音楽の分野では1982年にCDが登場。
1992年には音をデジタルで録音できるMD、2000年にはMP3プレイヤーに保存するのが一般的になっていました。
そして写真の分野でも同様の変化が生じてきました。
デジタルカメラが一般向けに登場したのは1990年代であり、現代では当たり前になっている液晶画面付きデジタルカメラが1995年に世界で初めて登場したのです。
そんなデジタルカメラ黎明期に、Appleからもデジタルカメラが販売されていました。
1994年には、双眼鏡のようなデザインの「QuickTake 100」が販売開始。
これは解像度640×480の画像を撮影できるカメラで、8枚の画像しか保存できませんでした。
そして1995年には「QuickTake 150」、1997年には「QuickTake 200」が販売。
QuickTake 200は現在のデジタルカメラに近いデザインとなっており、価格は7万9800円でした。
当初、売り上げは好調に思えましたが、富士フイルムやキヤノン、ニコンとの競争には勝てませんでした。
1997年にはスティーブ・ジョブズ氏がAppleに復帰し、Appleをデジタルカメラ事業から撤退させることに。
しかし「QuickTake」という名称だけは、最近のiPhoneの動画撮影機能に流用されています。
ピピンアットマーク(1996-)
1990年、任天堂からスーパーファミコンが誕生。
そして1994年、ソニーからPlayStation(略称:PS1)が販売されました。
徹夜でゲームしたという人も多いのではないでしょうか。
子供も大人もゲームに夢中になっていたこの時代に、実はAppleもゲーム機を発売していました。
Appleはバンダイと提携し、4万9800円という値札でゲーム機「ピピンアットマーク」を売り出したのです。
ピピンアットマークは専用のソフト以外にもMacintosh用のゲームもプレイでき、さらにインターネットにも接続可能。
複合的な機能を備えており、新たな角度から家庭用ゲーム機のブームに乗れると考えていたのでしょう。
そのためAppleは、初年度の販売台数を30万台だと見積もっていました。
しかし結果的には4万2000台しか売れず、「世界で最も売れなかったゲーム機」と呼ばれるように。
ちなみにPlayStationの累計出荷台数は1995年の時点で200万台、1996年の時点で1000万台でした。
ソニー、任天堂、セガとは異なり、ゲーム機の分野でAppleにチャンスはなかったのです。
さて、現在のAppleからは想像できないレベルの「イマイチな90年代製品」を紹介してきました。
どれもアイデアは悪くないように思えますが、やはり「洗練されていない感」が否めません。
とはいえ、90年代の「時代の激流」に翻弄された製品に愛着を抱く人は多いです。
もし、どれか1つでも所持しているなら、販売期間が短いレアな製品として大切に扱ってあげてくださいね。