史上2例目となる革製の鱗鎧を発見
史上2例目となる革製の鱗鎧を発見 / Credit: Patrick Wertmann et al., Quaternary International(2021)
history archeology

革の鱗でできた2500年前の「スケイルアーマー」を発見、史上2例目

2022.01.16 Sunday

中国北西部の遺跡で発見された2500年以上前の装身具。

これが、チューリッヒ大学(University of Zurich・スイス)を中心とした国際研究グループにより、5000枚以上の革の鱗からなる鎧であることが判明しました。

いわゆるスケイルアーマーのようなもので、バイオニクス(自然からヒントを得て応用する技術)の初期の例と見られます。

また、この手の革製鱗鎧としては2例目の発見とのことです。

研究の詳細は、昨年11月20日付で学術誌『Quaternary International』に掲載されました。

Rare ‘bionic’ armor discovered in 2,500-year-old China burial https://www.livescience.com/rare-leather-armor-found-china-burial
No borders for innovations: A ca. 2700-year-old Assyrian-style leather scale armour in Northwest China https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1040618221005553?via%3Dihub

紀元前786〜543年頃のものと判明

この鱗鎧は、中央アジアに広がるタクラマカン砂漠の上部、トルファン近郊のYanghai遺跡で出土したものです。

Yanghai遺跡は1970年代に地元民によって発見され、2003年以降に500以上のが発掘され、その中に今回の鱗鎧も含まれていました。

この地はBC12世紀からAD2世紀までの約1400年間、人々によって継続的に利用されていたことが分かっています。

彼らは文字による記録を残しませんでしたが、古代中国の歴史家はこの地の人々をチェシ(Cheshi)族と呼んで記録していました。

古文書によると、チェシ族はテントを張って暮らし、農耕を営み、牛や羊の放牧をして、乗馬や弓の名手だったようです。

中央やや右がYanghai遺跡の場所
中央やや右がYanghai遺跡の場所 / Credit: Patrick Wertmann et al., Quaternary International(2021)

研究主任の一人で、チューリッヒ大学のパトリック・ヴェルトマン(Patrick Wertmann)氏は「革製鱗鎧の発見はきわめて珍しい」と言います。

ヴェルトマン氏によると、BC14世紀のツタンカーメン王の墓から発見された革製鱗鎧が、出所が判明している唯一の先例とのこと。

ニューヨークのメトロポリタン美術館にも古代の鱗鎧が保管されていますが、こちらはBC8〜3世紀頃という情報以外、ほとんど何も分かっていません。

研究チームは今回、鱗鎧が見つかった墓に埋葬されていた遺骨を調査。

その結果、30歳前後で亡くなった男性と判明し、鱗鎧の他に陶器や羊の頭蓋骨などと一緒に埋葬されていました。

さらに、鱗鎧に刺さっていた植物のトゲを放射性炭素年代測定したところ、BC786〜543年頃のものと判明しています。

放射性炭素年代測定とは生き物体内の放射性炭素の存在量から、いつその生物が生命活動をやめたか知ることができる測定法です。

ここから、鱗鎧は約2500〜2700年前のものであり、男性は兵士だったと考えられます。

男性の遺骨が見つかった墓、赤丸が鱗鎧
男性の遺骨が見つかった墓、赤丸が鱗鎧 / Credit: Patrick Wertmann et al., Quaternary International(2021)

共同著者で、ドイツ考古学研究所(DAI)のメイケ・ワグナー(Mayke Wagner)氏は、鱗鎧について「一般兵のための軽量かつ効率的に脱着できるフリーサイズの防御服だった」と指摘。

また「他人の手を借りずに素早く装身でき、打撃や剣戟に対する防御力を高めることができた」と続けます。

鎧を復元してみると、5444個の小さな革の鱗と、牛の原皮(げんぴ)で作られた140個の大きな鱗からなっていました。

それぞれの鱗は横一列に並べられ、革紐が切り込みを通すようにそれらをつなぎ合わせます。

そして、各列を魚の鱗のように重ね合わせることで、一枚の鎧の完成となっていました。

革紐で横一列に鱗をつなげる
革紐で横一列に鱗をつなげる / Credit: Patrick Wertmann et al., Quaternary International(2021)
それぞれの列を今度は縦に重ねて合わせる
それぞれの列を今度は縦に重ねて合わせる / Credit: Patrick Wertmann et al., Quaternary International(2021)

一方、この鱗鎧は中国北西部で見つかったものの、出所は中国ではないと指摘されています。

では、一体どこから来たのでしょうか。

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