突然変異はランダムに起こるわけではないと判明!
これまでの生物学の常識では、突然変異はゲノム全体でランダムに起こると信じられていました。
細胞分裂を制御する遺伝子など生物学的に重要な場所では変異がみられにくいことが知られていましたが、それはあくまで自然淘汰の結果であり、変異そのものはどの遺伝子にもまんべんなく起きていると考えられていました。
つまり重要な遺伝子で変異がみられないのは、そのような重要な遺伝子が変異した個体が自然界で死んで子孫を残せていないから、とされていたのです。
そしてこの考え方(突然変異はランダムに起こる)は、現在の進化論において「調べるまでもない常識」とされてきました。
しかし「常識」とされたものの多くにみられるように、詳細な検証と証明は行われていませんでした。
そこで今回、マックス・プランク研究所の研究者たちは、突然変異が本当にゲノム全体に等しい頻度で起きているかを、改めて調べることにしました。
調査にあたって研究者たちは「植物実験界のマウス」ともいうべきシロイヌナズナの400系統のDNAを調べ、100万カ所に及ぶ突然変異を分析しました。
(※動物実験でマウスが多用されているように植物実験ではシロイヌナズナが多用されています)
結果、遺伝子本体は周辺部分にくらべて変異頻度が半分であり、細胞分裂などの重要な遺伝子においては変異頻度が3分の1にまで減っていることを発見しました。
この結果は、突然変異の発生率にそもそもの偏りが存在しており、重要な遺伝子は変異が起こりにくくなっていることを示します。
サイコロを使ったギャンブルに例えるならば、自然淘汰というゲームを行うにあたって植物たちは、特定の目が出やすい(あるいは出にくい)、イカサマサイコロを使っている、ということになります。
重要な遺伝子に変異が起これば生存確率が大きく下がる一方で、奇跡が起これば全く新しい環境に適応することが可能になりますが、どうやら植物はハイリスクな変異(大博打)を避けているようです。
望みの薄い変異に大事な種の運命をゆだねるよりも、安全な線路の上を歩ませたほうが結果的に、生存率が高かったからと考えられます。
しかし、いったい何が突然変異の頻度を決めているのでしょうか?