声優並に超リアルな演技をするボイスロイドの動画
現在、インターネット上にはテキストとして打ち込んだ文字を読み上げてくれる「音声読み上げソフト」で作られた膨大な数の動画が存在します。
読み上げソフトを用いることで、作者は動画の内容を人の声を通して伝えることができるようになりました。
また複数のソフトを利用することで、キャラクター同士の会話も可能になり、動画の演出に人間同士の会話のようなテンポを生み出すことが可能になります。
かつての読み上げソフトは機械音声まる出しの違和感ある声しか出すことができませんでしたが、ここ10年あまりの技術進歩により、より人間の声質に近い表現が行えるようになってきました。
しかし既存の読み上げソフトは「読み上げ」が主な目的であり、その声は主として中立的・事務的であり、感情のこもった演技は不得意でした。
また読み上げられる単語と単語の間に微妙な違和感が存在しており、なめらかさに欠けています。
そのため読み上げソフトと人間の本物の声の判別は容易でした。
ですがSonantic社によって開発されたAI音声は、人間なのか機械なのか、その声を判別することが非常に困難です。
バレンタインデーにあわせて公開された上の動画では、聞こえてくる女性の声は全て機械音声です。
しかしあまりにリアルであるため、人間の声そのもののように聞こえます。
新たに開発された音声ソフトは、AI技術を用いることで、これまでの読み上げソフトが苦手としてきた自然な単語の連結を可能としています。
そのため利用者は今まで通り文章を打ち込むだけで、より自然な音声を作成することが可能になるのです。
また既存の読み上げソフトは入力された文章に対して常に同じ調子でしか発音がされませんが、Sonantic社が開発したAI音声は同じ文章に対して「怒り」「恐れ」「幸福」「悲しみ」「表現力豊か(自然な読みあげ)」など複数の演出設定がワンクリックで選択できるようになっています。
さらにスピーチの抑揚、速度、音量の調節はもちろん「呼吸音」「溜息」「笑い声」など非言語的な表現を、単語と単語の間に自由に挟み込むことで、泣きながら言葉をつづる女の声、怒りながら罵声を浴びせる野太い男の声、怯える少女の声など、既存の読み上げソフトに不足している感情表現が可能になりました。
Sonantic社は開発されたAI音声ソフトを用いることで、フルボイスのゲーム開発や映画作成を、極めて安価かつ少人数で作成可能になると述べています。
もし同じ性能をもった「演技ソフト」が出回るようになれば、誰もが自分の好みのセリフを自然な音声で作ることが可能になるでしょう。
しかし機械音声の隆盛は、声優業界にとっては痛手となるかもしれません。
声優の声の解析をして、その再現が自動化されれば、全ての音声が機械で作られたアニメやゲーム、映画の作成も可能になるからです。
今後、声優たちは自らの声の著作権(演技や声質の解析や再現の規制)に、いままで以上の注意を払う必要が出てくるかもしれません。