サンゴの「白化現象」がプロジェクトのきっかけに
このプロジェクトは、豪クイーンズランド州の観光業者である「ウェイブレングス・リーフ・クルーズ(Wavelength Reef Cruises)」により、4年前に始められました。
きっかけは、2016年に起こったグレートバリアリーフのサンゴの「白化現象」です。
サンゴは普段、光合成を行う褐虫藻(かっちゅうそう)と共生することで成長しています。
しかし、海水温の上昇が続くと、褐虫藻がサンゴから脱出し、サンゴは色素を失うとともに死んでしまうのです。
その際に、サンゴが白く見えることから「白化現象」と呼ばれます。
これを機に、同社の経営者で海洋生物学者のエドモンドソン夫妻は、サンゴを回復させるための取り組みとして、本プロジェクトを立ち上げました。
現在では、シドニー工科大学(UTS)の科学者と、他のツアー業者5社も参加しています。
サンゴ育成の方法とは
サンゴの育成プログラムは、簡単かつシンプルです。
まず、サンゴの破片を回収し、海面下2メートルに吊るされた苗床で育てます。
その後、化学接着剤ではなく、金属製のクリップを使って、サンゴ礁に取り付けます。
従来よりも低コストかつ早く植え付けができ、高い生存率にもつながっているようです。
サンゴの苗は6週間もすると、サンゴ礁に吸着し、数年後には他のサンゴ礁とまったく同じになります。
果たして成果のほどは?
共同チームは今回、4年間のサンゴ育成プログラムの成果を確認するべく、2週間にわたる水中調査を実施。
これまでに7万にのぼるサンゴの植え付けを終えていますが、調査の結果、どの苗も非常に目覚ましい成長を見せていることがわかりました。
UTSのデビッド・サゲット(David Suggett)氏は、こう話します。
「育成中のサンゴ礁を訪れるようになって1年ほど、いずれも素晴らしい成長を見せています。
とくにここ2年は、成長するにはとても良い環境だったため、サンゴも非常に生き生きとしていました。
新たに植え付けられたサンゴの断片も増えており、サンゴ礁が徐々に回復していることが大きな励みとなっています」
今のところ、グレートバリアリーフの27カ所に7万個以上のサンゴの断片が植えられ、平均85%という高い生存率でサンゴが再生されていると言います。
これは、前例のない規模でのサンゴ礁の復活です。
気候変動からサンゴ礁を守るために…
このように、繁殖可能なサンゴ礁が新たに増えることで、将来的に何千ものコロニーが作られるようになります。
また、息を吹き返したサンゴ礁には、たくさんの魚たちが戻ってきますし、色鮮やかなサンゴのもとでは、シュノーケリング体験も一段と魅力的なものとなるでしょう。
共同チームは今後も、深刻化する気候変動からサンゴを守るべく、協力関係を築いていくとのこと。
サゲット氏は、次のように述べています。
「今では、さまざまなツアー業者が一緒になって、何万ものサンゴの植え付けに参加するようになりました。
サンゴの移植をどのように、いつ行えば成功するのかが分かるようになっています。
この新たな協力関係の下でより良い管理が出来るようになるでしょう」