「意味のない文字」と「意味を持つ単語」
ヒトの扱う言語にはさまざまな種類がありますが、ある共通した特徴があります。
それは、無意味な文字(記号)の組み合わせから意味のある単語を作っているということです。
例えば、「ネコ」という単語は「ネ」と「コ」という2つの文字から構成されます。
「ネコ」には当然、生物の種類を示す意味がありますが、文字単品の「ネ」も「コ」も特定の意味は持ちません。
英語においても同様で、「CAT」はネコのことですが、「C」「A」「T」というそれぞれのアルファベット自体が特定の意味を示しているわけではありません。
人間の扱う言語(文章)は、このように、意味を持った単語と、意味を持たない文字という二重の分節から構成されています。
そのため、人間の言語が持つこの特徴のことを「二重分節構造」と呼びます。
この構造によって、人間は有限の文字(ひらがななら50個、アルファベットなら26個)から、数万を超える無数の言葉を生み出しているのです。
つまり、人間が複雑な言語を操れるのは、こうした文字と単語の関係性を理解する能力に秘密があると考えられます。
そして、この能力はヒト以外の霊長類では、進化的にもっともヒトに近いグループであるチンパンジーだけから確認されていました。
しかし、言語獲得につながるこの二重分節構造を解析する能力が、実際には霊長類のどの範囲にまで存在しているかは明らかになっていません。
そこで今回、新潟大学の新たな研究は、チンパンジーよりはヒトから遠いグループであるマカクザル(ニホンザル)に、文字から単語を組み立てる能力があるかどうかということを検証したのです。