他人の情報を知ると自分も知られたと感じてしまう
好きなアイドルや芸人など、有名人の個人情報をいろいろ知るほど、相手も自分のこともよく知っているような錯覚を覚えたことはないでしょうか?
この現象が極端化すると、有名人の自宅に旧知の友人のような気軽さで押しかてしまう「ストーカー」行動に発展してしまいます。
こうした事例は、人間の本能が「情報の対象性を錯覚する」ことが原因の1つになっています。
「対象性」の「錯覚」と言うと難しそうな響きがありますが、要は他人を知ると他人も自分を知っている(情報に対象性がある)と思い込んでしまう心理のことを指します。
冷静に考えればあり得ないことですが、本能に刻み込まれているため無意識レベルでそう思ってしまうのです。
そこで今回、シカゴ大学の研究者たちはこの「情報対象性の錯覚」を有益な方法で活用できないか調査を行いました。
研究ではまず複数の被験者たちに対してネットを介した文章で「他人の個人情報」を知ってもらいました。
(※この他人は実際には存在しない架空の人物です)
そして他人を知るという行いが、被験者の行動にどのような影響を与えるかを9種類の異なる実験で検証しました。
結果、被験者たちは情報を知った他人に対して馴れ馴れしく振る舞うようになり、同時に嘘の発覚を恐れて正直に接するようになり、バレずに不正が可能な場面でも不正行為を行わなくなりました。
そして最終的に、この「他人」が自分についてかなりの情報を持っていると考えるようになることが判明します。
この結果は「情報対象性の錯覚」がネットを介した文章交換という非常に簡素な条件でも出現することを示します。
しかしここで終わっては既存の説の確認でしかありません。
そこで研究者たちは自らの研究成果が実社会でも通用するかをニューヨーク市警の協力を受けて調べることにしました。