好きな人には自分を知ってもらうことからはじめたほうが科学的
今回の研究によって、他人の情報を知ると他人も自分を知っていると錯覚してしまう「情報対象性の勘違い」が再確認され、この現象が現実世界での犯罪抑止に有用であることが示されました。
警察官の個人情報が書かれたカードを受け取った住民たちは警察官の情報を知ることになり、結果として自分のことも警察官に知られたと錯覚するようになります。
冷静になって考えればそのようなことが起こるはずもありませんが、本能に染みついた心理を否定することは困難です。
そのためカードが配られた地域の住民たちは警察官に対して「正直」や「不正行為の抑制」を無意識レベルで行うようになり、結果的に犯罪率が抑制されたと考えられます。
また研究者たちはこの効果が、個人情報に触れることで感じる親近感にもかかわっていると予測しています。
人間はまったく接触のない相手であってもその情報を仕入れることで親近感を持つことが知られているからです。
そして親近感を維持するために無意識的にも警察官が好まない行い(犯罪)を避けるようになっていたと考えられます。
どうやら人類にとって他人を知ることは単に情報を脳に入れてるだけにとどまらず、さまざまな本能や心理、感情に影響を与えるもののようです。
新しい職場に赴任した際には、自分の情報を積極的に開示することで錯覚を誘発できれば、人間関係の構築に役立つかもしれません。
あるいは、面識がない人に一目ぼれをしているならば、いきなり告白する前に、自分の情報を伝えたほうがいいでしょう。
そうすれば、相手に本能的な「情報対象性の勘違い」を誘発させて、関係性の向上に役立つかもしれません。