大群がまとまっているのに指揮官はいない不思議
この大群のムクドリたちは、誰かに指揮されて飛んでいるわけではありません。
特に計画的に行動しているわけではないのです。
ではどうして彼らはまとまって飛ぶことができるのでしょう?
近年の研究によると、ムクドリたちは周囲の動きを観察して、行動を調整していることがわかってきています。
たとえば、マーマレーションの映像を分析した専門家によると、ムクドリは地上から見た印象ほどは密集しておらず、実際は自由に動けるスペースが十分確保されているようです。
また、横方向より前後のスペースが広く取られており、飛ぶ方向に対して仲間とぶつからないように距離を調整していると見られます。
ただ、彼らの群体行動については、未だ完全に解明できているわけではありません。
先月メキシコでは、マーマレーンション中のムクドリたちが地面に激突するというショッキングな映像が捉えられました。
何が影響してムクドリがこのような事故を起こしたのかは、明らかではありません。
しかし、集団を指揮して全体の動きを管理する存在がいないことはここからもわかると思います。
彼らは周りの動きに従って飛んでいるため、急降下から復帰するタイミングを見誤ると群れ全体が地面に激突する惨事になってしまうのでしょう。
マーマレーションのような集団行動は、ミツバチやコウモリ、魚の群れにも見られます。
これについて、生物学者だけでなく、数学者やコンピューター科学者も3Dモデルなどを用いて、群れの動きの解明に乗り出しています。
もちろん、好奇心がマーマレーション研究の原動力となっていますが、一方で、ムクドリがぶつからずに群体で飛行できるメカニズムの解明には、実用的な側面もあります。
たとえば、密集した状態で互いにぶつかることなく移動できるシステムは、未来の自律走行車の開発に役立つかもしれません。
私たちの身近な生物の日常的な行動の中にも、未だによくわからないことがたくさんあります。
ムクドリたちのマーマレーションの理由は、今回紹介した説の中にあるかもしれません。しかし、本当は全然別の理由なのかもしれません。