ムクドリたちの謎の密集飛行「マーマレーション」の目的とは?
まるでヤブ蚊の群れのようですが、これは体長約24cmもあるムクドリたちの群れです。
彼らはスズメとハトの中間くらいのサイズで、時速80kmものスピードで空を飛びます。
多くの鳥たちは、餌を探すときや移動するときに群れを作ります。
しかし、上の画像で示したような「マーマレーション』と呼ばれるムクドリたちの密集飛行はそんなわかりやすい目的を持っていません。
この特殊な密集飛行が見られる時期は、秋から早春にかけて。日没の1時間ほど前に、ムクドリたちの寝る時間が近づくと形成されます。
だいたい45分ほど空を飛びまわった後、いっせいに寝ぐらに戻っていきます。
ちなみに「マーマレーション」という名称は、数万〜数十万のムクドリたちの低く柔らかな”ざわめきの音(murmur)”にちなんで名づけられています。
ただざわめきと言ってもそれはかなりの騒音で、地域の人たちにとっては、鳥たちが落とす大量のフンと共に、騒音も悩みの種になっています。
では、なぜムクドリはマーマレーションを行うのでしょう?
よく見る渡り鳥のV字フォーメーションとは違い、彼らの密集飛行には空気力学的なメリットはありません。
そもそも移動を目的にした行動ではないことから、これは仲間たちに対するなんらかのパフォーマンスと考えるのが妥当でしょう。
有望な説は、この行動が視覚的に他のムクドリを呼び集め、集団で寝ぐらに帰るよう誘導するため、とする考えです。
ムクドリは身を寄せあうことで仲間と体温を共有し、寒い夜をやり過ごすと言われています。
つまり、マーマレーションは寒い夜を乗り越えるため、離散していた仲間たちをなるべく一所に集め、一緒に夜を過ごすための行動の可能性があるのです。
そう考えると、これが秋から早春にかけての寒い時期によく見られる理由も納得できます。
それから、大群で集まることで、フクロウやタカといった天敵から生存できる確率も高まると指摘されています。
ムクドリの群れが多ければ多いほど、捕食者は的を絞りにくくなります。
さらに、それぞれのムクドリは一番危険な外側から群れの内側に移動しようとするので、常に竜巻や波のような変化をします。
これにより、捕食者の注意は散漫になりますし、ヘタにぶつかると自分が痛手を負いかねません。
こうした行動は海の小さい魚たちにもよく見られるものです。確かにその動きはにているかもしれません。
だとすればまさに、ムクドリたちは”空のスイミー”と言えるでしょう。
なぜするのかに加えて、もう1つ不思議なのは、このマーマレーションには群体を指揮するようなリーダーがいないということです。
彼らはどうやって集団の動きを制御しているのでしょうか?