テッポウウオの射撃はどんな仕組み?
テッポウウオ(Toxotidae)は、スズキ目テッポウウオ科の魚で、アジア太平洋の淡水域から汽水域(淡水と海水が混じり合う中間領域)に生息します。
とくに、マングローブ林のような植物の生い茂る海岸を好むことで有名です。
熱帯域に広く分布し、沖縄の西表島が北限となっていることから、水温の高いエリアに適しています。
体長は平均15〜25センチで、水中の小魚や甲殻類をすばやい泳ぎで捕まえる他、水鉄砲をつかった昆虫の捕食を得意とします。
おもに日中に狩りをしますが、この時間帯は水辺を行き交う昆虫が少ないため、少ない弾数で仕留める正確さが強いられます。
では実際に、テッポウウオの射撃はどのような仕組みになっているのでしょうか?
テッポウウオの射撃はまず、弾丸の通り路である「銃身」を作ることから始まります。
テッポウウオの舌には、靴べら状の骨が通っており、それを口内天井の硬口蓋(こうこうがい)に当てます。
この口蓋には溝があり、舌骨がピタリとはまる作りになっています。
CTスキャナー(コンピューター断層撮影)を用いた最近の研究で、テッポウウオの舌骨や、それが硬口蓋にはまる骨の構造が明らかにされました。
こうして水の弾丸の通り路(チューブ)が準備されます。
次に、口内に含まれた水が、エラ蓋のあたりで圧縮され、それをパタンッと閉じることで水弾がチューブを通り抜け、勢いよく発射されます。
エラ蓋の役割は、いわば、銃の「引き金」に相当するでしょう。
それともう一つ、水弾はそのまままっすぐ飛び出すのではなく、口先の手前で「少し膨らんだ空洞」に入ります。
一度、この空洞に入ることで、その先の射出口が急に狭くなり、水弾のスピードが加速したり、流れが安定するのです。
これは男性の泌尿器にある仕組みと同じです。
男性ならば誰でも狙った場所におしっこを飛ばそうと試したことがあると思いますが、テッポウウオの水弾はこれと似た原理のことをやっているのです。
ただテッポウウオの放つ水弾は、時速36キロに達すると言われおり、人間のおしっこよりずっと高度なものです。
しかし、驚くべきはそれだけにとどまりません。
テッポウウオはこの他に、水中から獲物を正確に射落とすための「裏テク」を使っているのです。