午前0時に街灯が消える場所で、特定の犯罪が減った
イギリスでは数年前から、都市や農村の一部住宅街に、「パートナイト照明(part-night lighting)」という街灯を導入しています。
これは、交通量が大幅に少なくなる真夜中以降に、街灯が自動的に消灯するしくみです。
エネルギーコストとCO₂排出量の削減がおもな目的ですが、地元住民からは安全面を懸念する声もあり、あまり歓迎されていませんでした。
このように自治体と住民の利害が対立する場合、必ずメリットとデメリットのバランスを取る必要がありますが、それには確かな根拠とデータが必要です。
そこで、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)とユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究グループは、「夜間照明」と「犯罪率」の関係を調べることに。
調査では、3種類の街灯:「パートナイト照明」「深夜0時以降に薄くなる照明」「夜通し点灯している明るい照明」を対象としました。
そして、3種の街灯を設置したエリアと、その近隣のエリアについて、犯罪率の増減の変化を追跡しています。
およそ10年にわたるデータを分析した結果、街灯の種類と、暴力事件および住宅侵入の間に有意な関係は見られませんでした。
ところが驚くことに、駐車中の自動車からの窃盗率は、パートナイト照明が設置された後で減少していたのです。
また、自動車自体の盗難もわずかに減少していましたが、これは統計的に重視するほどの変化ではないと判断されています。
逆に「明るい場所」では車上荒らしが増加!
さらなる興味深い発見は、パートナイト照明の設置で車上荒らしの犯罪率が低下した場合、そのエリアに隣接する「明るい通り」では、逆に同様の犯罪率が増加していたのです。
まるで暗くなった通りで減った車上荒らしを補うかのように、明るい場所で車上荒らしが大幅に増えていたといいます。
ただし、すべての犯罪件数がそっくりそのまま明るい場所に移ったわけではなく、その分を考慮しても、パートナイト照明の設置は犯罪率の純粋な減少につながっていました。
その一方で、「夜通し点灯している明るい照明」が、犯罪率の増減に関連する有意な証拠はありませんでした。
しかし、最も気になるのは「なぜ街灯が消えて暗くなった場所で、車上荒らしが減ったのか」という点です。
直感的に考えれば、犯罪者にとっては、暗い方が窃盗のチャンスが増えるように思われます。
なぜ「暗い場所」での犯罪が減ったのでしょうか?