なぜ「暗い場所」での窃盗が減ったのか?
これについて、LSHTMの統計学者であるフィル・エドワーズ(Phil Edwards)博士は、次のような見解を示しています。
「真夜中以降に照明が消されると、街はほぼ暗闇に包まれ、車内に貴重品が残されているかどうか確認することが難しくなります。
その結果、犯罪者は、懐中電灯などの簡易ライトを使う必要に迫られるでしょう。
そうすると近隣住民に疑われたり、目撃されるリスクも高まるため、暗い場所での窃盗をやめている可能性があります」
チームはこれを実際に検証したわけではありませんが、そう考えると、犯罪者が近隣の明るい場所に移ったのも納得できます。
研究主任の一人で、UCLのリサ・トンプソン(Lisa Tompson)氏は、次のように述べています。
「今回のような調査は、犯罪やセキュリティの問題をよりよく理解するのに役立ちます。
本研究の成果は、省エネ型の街路照明の適応により、対象エリアで特定の犯罪率が低下する可能性を示しました」
とした上で、「これは非常に心強いデータですが、すべての条件下で同様の結果が得られる保証はまだないので、照明の設置・変更は、慎重に管理する必要があるでしょう」と注意しています。
今回の研究は、イギリス警察が監視する、犯罪率の高い43の指定地域のうちの1つを調べただけであり、この結果を国レベルで一般化することはできません。
チームは今後、街灯が犯罪率に与える影響を明確にすべく、より広範な調査を行う予定です。
まとめ
街灯はエネルギーコストの面だけでなく、昆虫の繁殖や、ふ化直後のウミガメに悪影響を与えることが長く指摘されています。
家の窓の目の前に街灯が設置されている人などは、真夜中は消してくれよと感じているかもしれません。
もし、今回の結果があらゆる地域で広く確認されれば、環境にも、生物にも、私たちにも良いことづくしです。
夜とは本来暗いものです。
治安悪化と明確に相関しないのであれば、街灯を一晩中煌々と灯すより、消灯したほうが予想をはるかに上回るメリットがあるのかもしれません。