幹細胞化を「スンドメ」した皮膚細胞が30歳も若返っていた
幹細胞化を避けて若返りだけを起こすにはどうしたらいいか?
答えは「山中因子」の短期的な運用による幹細胞化の「スンドメ」でした。
山中因子を使って幹細胞化を行うには通常、体の細胞を50日間、山中因子に漬け込む必要があります。
研究者たちはこの日数を短縮した場合、完全な幹細胞化を経ずに若返りのみを起こせると考え、実験を行いました。
調査にあたっては53歳の被験者から皮膚細胞を採取し、さまざまな期間で「山中因子」に浸し、皮膚細胞としての機能を維持できる範囲での若返りの限界を調べました。
すると、皮膚細胞を13日間だけ「山中因子」に浸した場合、皮膚細胞としての機能を維持したまま、30歳ぶんの若返りを起こせることが判明します。
人間のDNAは加齢にともないメチル基が付着していき、メチル基が過剰に付着した遺伝子は不活性化され、細胞内部のmRNAのバランスが崩れていきます。
(※具体的には、老化によって、細胞の年齢を示すエピジェネティッククロックが変化し、mRNAの構成バランスを示すトランスクリプトームが乱れていきます)
しかし「山中因子」を使って幹細胞化の「スンドメ」を行ったところ、皮膚細胞としての機能を維持したまま、メチル基の付着パターンやmRNAのバランスが53歳のものから23歳前後のものへ変化していたのです。
この結果は、幹細胞化の「スンドメ」が皮膚細胞に遺伝子レベルで30歳の若返りを起こしていることを示します。
また、お肌にハリとツヤを与えることが知られているコラーゲンの生産能力を調べたところ、若返った皮膚細胞ではコラーゲンがより多く生産されていることが判明します。
さらに若返った皮膚細胞を培養して作った疑似的な皮膚シートに傷をつけてみたところ、若返っていない細胞から作られた皮膚シートに比べて、塞がるスピードが上がっている様子が観察されました。
(※線維芽細胞の傷への移動が速くなっていました)
これらの結果は、幹細胞化を「スンドメ」された皮膚細胞は機能の面においても、若返りを起こしていることを示します。
研究者たちは実験結果から「細胞がその機能を失うことなく若返らせることができることを証明した」と述べています。