多発性硬化症では「神経の絶縁体」が失われていく
多発性硬化症は古くから、筋肉が麻痺や痙攣を起こしたり、視力が低下していく難病として知られていました。
これらの症状は、体を守るはずの免疫が誤って神経回路を覆う絶縁体部分の細胞を破壊してしまうことで発生します。
電線の外側を覆うビニールが剝がれてしまうと電気の漏電や不正電流の流入が起こるように、神経回路の絶縁体部分が破壊された場合も電気信号の正確な伝達が妨害され、脳からの運動命令や脳に向かう感覚に異常が発生します。
多発性硬化症は多くの場合、回復と再発を繰り返すことが知られており、病名にもなっている筋肉の硬化は主に回復期にみられる症状であることが判明しています。
しかし、一部の多発性硬化症では回復が起こらず、症状が持続的に悪化していく「進行性」となることが知られています。
通常の多発性硬化症には進行を遅らせる治療薬が存在しますが、進行性に対しては現在のところ、有効な治療法はほとんど存在しません。
また多発性硬化症における、「免疫が自分の神経を攻撃するようになる原因」も長い間、謎につつまれていました。
しかし今年の1月になって発表された2つの論文によって、多発性硬化症の原因解明が大きく前進します。