現存する最古の「マヤ暦のカレンダー断片」と判明!
今回のカレンダー断片は、中米グアテマラ北部のサン・バルトロ(San Bartolo)にある「ラス・ピントゥラス」というピラミッド遺跡から発見されました。
マヤ文明は、今日のメキシコ南東部、グアテマラ、ベリーズなど、いわゆるマヤ地域で栄えた文明です。
この地域は、北から「マヤ低地北部・マヤ低地南部・マヤ高地」の3つに分かれ、サン・バルトロは、マヤ低地南部に属します。
マヤ低地南部は、もっとも古くから栄えた地域として知られ、紀元前900年ごろからいくつもの大都市が盛衰を繰り返してきました。
また、マヤ文明が大きく飛躍した時期を「先古典期」と呼び、こちらも以下の3つに区分できます。
・紀元前2000〜紀元前1000年ごろの「前期」
・紀元前1000〜紀元前350年ごろの「中期」
・紀元前350〜紀元後250年ごろの「後期」
さて、今回見つかったカレンダー断片は、かつてラス・ピントゥラスにあった壁画の一部と見られます。
ラス・ピントゥラスの歴史は、紀元前800年ごろまで遡ることができ、元の神殿に被せるように建て替えが行われたため、時代の違う層が複数重なり合っています。
本調査では2つの断片が回収され、上部には日付を示す黒い点と横棒、その下にシカの頭が、下部には未解読の図像が描かれています。
研究主任のデイビッド・スチュアート(David Stuart)氏によると、これは、マヤ文明で使われた暦の一種「ツォルキン」の中の一日、「7日目のシカ(7 Deer)」を示すとのこと。
ツォルキンは、1日から20日まで名前のついた日付を1月とし、これを13回繰り返して1年(260日周期)とします。
1〜20の日付は、たとえば、8日目の兎(8 Rabbit)、9日目の水(9 Water)、10日目の犬(10 Dog)という風に名前が付いているとのこと。
「7日目のシカ(7 Deer)」は、現在の慣用に従えば、「7マニク」と読めるといいます。
マヤのカレンダー断片は、過去にも中米の他地域で見つかっていますが、正確な年代の特定が困難でした。
しかし今回は、放射性炭素の年代分析により、紀元前200〜300年の間(先古典期の後期)に壁画に描かれたものと判明しています。
これは、今までに見つかっている最古のカレンダー断片より、1000年以上も古いとのことです。
260日周期のツォルキンは、現在でも一部のコミュニティーで用いられており、少なく見積もっても2300年は使われ続けています。
断片下部に描かれた図像の意味は不明ですが、縦に並んでいることから、上部の日付と絵の「キャプションのような役割を担っていたのではないか」と推測されています。
また今回の発見により、サン・バルトロの壁画を文化遺産に指定するべきとの声が高まっています。
研究チームは「この暦が23世紀にもわたって使用されていることは、マヤの文化・宗教的・社会生活において非常に重要な位置を占めていることの証である」と述べています。