中国の「悪魔のワークボール」
18世紀の中国には、「悪魔のワークボール(devil’s work ball)」と呼ばれる彫刻がありました。
材料には象牙が使用されており、独特の色合いと繊細なデザインが特徴的です。
現在では象牙の商業取引が原則禁止となっているため、同様の物が新しく作られることはないでしょう。
さて、悪魔のワークボールは、これ以上分解したり組み立てたりすることができません。
しかし、多くの人はこれを「パズルボール」と呼んできました。
その理由は、その構造と作り方にあります。
悪魔のワークボールは、彫刻の施されたボールの中に、別のボールが入っています。
しかも内側のボールの中には、さらに別のボールが入っており、ある作品では合計9層にもなるのだとか。
そしてこのワークボールすべては、1つの象牙の塊を削って作られています。
カプセルのように、半球を接着して内側にボールを閉じ込めるのではなく、9層すべてをただ削るだけで作り上げているのです。
では、どのように9層のボールを彫刻するのでしょうか?
この「彫刻プロセスの謎」こそが彫刻家にとってのパズルであり、現存する悪魔のワークボール自体が「パズルが完成した」ことを証明しています。
専門家によると、パズルボールの彫刻方法は、次の手順で行われるようです。
- 象牙の塊をボール状に削る
- その後、中心に向かって円錐型の穴を開ける
- L字型の特殊な彫刻刀を使い、内側をくりぬくようにして、外層から内側のボールを切り離す
- 同様の作業を繰り返し、複数の層をつくる
- それぞれの層の表面に彫刻を施す
言うだけなら簡単ですが、実際に作業を行える人はほとんどいないでしょう。
ちなみに、「完成品の穴を全層そろえる」というパズル的な遊び方もできるようです。
とはいえ作品自体が非常にもろいため、この方法で遊ぶ人はいません。
彫刻家が完成させたパズルとして、見て楽しむのが最善のようです。