プロレベルのワインレビューを書ける「レビューAI」
文章を生成するAI自体は、以前から存在してきました。
しかしAIが書いた文章はたどたどしく、簡単に見分けられます。
特に専門家のような「分かっている人」が書いたレビューと比べると、使用されている単語や表現から、その違いが明らかです。
ところが新しく開発されたレビューAIは、既存のレビューを学習し、まるで人間のような「分かっている」レビューを作ることが可能です。
今回の実験では、レビューの対象としてワインやビールが選ばれました。
最初にチームは、10年分のワイン雑誌からソムリエのレビュー12万5000件を抽出。
これらでAIを訓練し、栽培地域、品種、発酵方法、製造年、味や香りの表現など、専門家たちの文章スタイルを学習させました。
また同様に、ビールを扱ったWebサイトの約14万3000件のレビューを利用して、AIを学習させました。
次にチームは、訓練されたAIの性能を検証するため、300種類のワインと69種類のビールについて、AIに商品レビューを生成させました。
そして同じ商品について人間が書いたレビューも用意。
それぞれのレビューを実験の参加者に読んでもらったところ、ほとんどのケースで、AIのレビューと人間のレビューを見分けることができませんでした。
実際、AIは次のようなレビューを生成しました。
「香りは少し閉じているが、ホワイトグレープフルーツとタンジェリン(ポンカンの仲間)の豊潤な香りが特徴的です。また凝縮感は控えめですが、後口にレモンライムの酸味が残ることで、きれいにバランスが取れています」
訓練されたAIは、まるでソムリエのようなレビューで人々を騙すことができたのです。
もちろん、AIがレビューを生成できるのは、既に人間によって多くのレビューが書かれている商品に限ります。
さて研究チームは、「このAIは、レビューを書く専門家に取って代わるものではなく、自社の商品説明を書く能力や時間がない経営者をサポートするもの」としています。
しかし悪用は簡単でしょう。
レビューAIは応用するなら、自社の商品を絶賛する本格的なレビューをいくらでも投稿できるはずです。
もしかしたら将来、専門家と見分けがつかないAIレビューの氾濫によって、商品の評価システムは完全に崩壊するかもしれません。