脳のエラー検出に使われるニューロンに「専門」はなかった
私たち人間は、抽象的な目的を実行するために、具体的な行動を評価することができます。
たとえば先の2つの試験の場合「正解と定義されたほうを答えよ」という目的を実行するために、エラー検知システムが自動的に作動し、私たちに間違いが起きたことを知らせてくれます。
この「一般的」なエラー検知機能は、私たちから遠回しな学習の手間をはぶき、効率的な目標達成を可能にします。
私たちが初体験する仕事においても、ある程度正解を選んで実行できるのは、この極めて汎用性の高い「一般的」なエラー検出機能があるからです。
(※初めからデキる人はこの一般的なエラー検出能力が高いからかもしれません)
また間違いが起きた場合、特定のミスの内容を検出し、何が失敗したかを探索する問題「固有」のエラー検知も重要です。
ただ問題「固有」のエラー検出機能は、問題に関する知識がなければ実行不能です。
(※問題文の知識があるから何を失敗したかを探れる)
しかしこれら一般的なエラー検出と固有のエラー検出がどのようなシステムによって行われているかは不明でした。
ただこれまでの予測では、ほぼ全自動で私たちをある程度の正解に誘導してくれる一般的なエラー検知システムと、問題や課題の知識を必要とする固有エラー検知システムは、別々のニューロンによって構成されているだろうと考えられていました。
そこで研究者たちは先の2つの試験で記録された共通点と差異点を中心に、新たな分析を行いました。
2つの試験で共通して活性化しているニューロングループがあれば、それらのニューロンはエラー検出において広く共通した一般的な機能にかかわっている可能性があったからです。
また違いを調べることで、問題固有のエラー検出に用いられたニューロンを特定することが可能になります。
しかし研究者たちがデータを比較したところ、一般的なエラー検出に使われているニューロンと問題固有のエラー検出に使われているニューロンが、全く同じであったことが判明します。
これまで研究者たちは一般的なエラー検出と問題固有のエラー検出には異なるニューロンが用いられていると考えていましたが、結果は予想と大きく異っていたのです。
この結果は、問題固有のエラー検出機能が、一般的なエラー検出機能を変調させたものに過ぎないことを示しています。
最初からデキるひとが専門家になっても強いのは、同じニューロンを使ってエラー検知を行っているからかもしれません。
研究者たちはエラー検知の仕組みを解明することで、いくつかの精神疾患を予防できると述べています。
存在しないエラーに反応して何度も調べてしまう強迫観念相や、統合失調症にみられる不適切な言動をしてしまう症状も、エラー検知の過剰や不足が招いている可能性があるからです。
あるいは、もし将来的にエラー検知能力を健康的に高めることができれば、誰もが「ある程度最初からデキる人」になれるかもしれません。
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