脳にはエラー検知ニューロンが存在する
間違いに気付いた瞬間、私たちは独特の「おおっと」感を抱きます。
これは、私たちの脳には言動を実行するだけでなく、結果の正しさを監視するエラー検知機能が搭載されている証とみなされています。
「おおっと」感が発生すると無意識のうちに脳の注意力が増加し、間違いの正体や原因を探りはじめる力を与えてくれるのです。
しかし「おおっと」感がどのような神経メカニズムでエラーを検知発生しているかは、詳しく解明されていません。
そこでカリフォルニア工科大学の研究者たちは、脳に差し込まれた電極から観測されたニューロンの電気活動データを分析することで、脳がどのように間違いの検出と特定を行っているかを調べることにしました。
実験の前段階としてまず、間違いの監視にかかわると考えられている脳の内側前頭皮質(MFC)に電極が差し込まれました。
(※電極の挿入はてんかんの治療過程として行われていました)
次に研究者たちは、被験者に対して認知の混乱を感じるようなテストを2つしてもらいました。
1つ目は緑のインクで赤と書かれた文字など、文字の色と文字の意味の食い違った単語を提示し、文字の色だけを答えてもらう試験を行ってもらいました。
私たちは長年に及ぶ読書の経験から、文字の意味を答えるほうが得意となっているために、大きな葛藤が生じます(間違えて赤と答えてしまいやすい)。
2つ目は「1-2-2」など2つは同じで1つは異なる3つの数字を示し、仲間外れの数字だけを答えてもらう試験でした。
この試験では画面に「1」「2」「2」の順番で「2」が2回表示されるために、被験者たちは間違って「2」と答えてしまう確率が高くなりました。
研究では、試験中の被験者たちのニューロンの電気活動について記録と分析が行われました。
結果、両方の試験において2つの異なるタイプのニューロンが存在することが判明しました。
1つ目のエラーニューロンは、エラーが発生した際に強く活性化し、2つ目の「競合」ニューロンは被験者が実行した(感じた)試験内容の難しさに応じて活性化しました。
またニューロンの活性化タイミングを調査したところ、全ての活性化が行動完了後(回答後)に起こることが判明しました。
この結果は、「おおっと」感をうみだしているニューロンは行動決定そのものにかかわっているのではなく、あくまで事後の評価に徹していることを示します。
しかしより興味深い発見は、ニューロンの集団活動にみられました。
エラー検知は内容が一般的でも専門的でも、おなじニューロンによってエラー検知が行われていたのです。