首長竜は首の長さで生じる抵抗力を、体の大きさでカバーしていた
首長竜は首の長さで生じる抵抗力を、体の大きさでカバーしていた / Credit: canva
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「首長竜って泳ぐのに首は邪魔じゃなかったの?」 素朴な疑問を解明!

2022.05.16 Monday

中生代の海には、プレシオサウルスやエラスモサウルスを筆頭とする、首の長い水生爬虫類(首長竜)が存在しました。

彼らの首の長さは、獲物をとらえるのに役立った反面、余分な抵抗力を生み出すため、効率的に泳ぐにはかなりネックだったようです。

しかし今回、英ブリストル大学(University of Bristol)の新たな研究により、首の長さによる遊泳効率の低下は「体を大きくすること」で補われたことが判明しました。

首長竜にとって、「首を長くしたければ、胴体も大きくする」が鉄則だったようです。

研究の詳細は、2022年4月28日付で科学雑誌『Communications Biology』に掲載されています。

Large Bodies Helped Ancient Sea Monsters With Extremely Long Necks Swim https://scitechdaily.com/large-bodies-helped-ancient-sea-monsters-with-extremely-long-necks-swim/ Ancient sea monsters with long necks had to evolve large bodies to rule Earth’s oceans around 200 million years ago, study finds https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10764115/Large-bodies-helped-extinct-marine-reptiles-long-necks-swim-study-finds.html
Large size in aquatic tetrapods compensates for high drag caused by extreme body proportions https://www.nature.com/articles/s42003-022-03322-y

首の長さで生じる抵抗力を「体の大きさ」でカバー

四肢を持つ脊椎動物は、過去2億5000万年の間に繰り返し地上から海に戻っており、イルカによく似た絶滅爬虫類の魚竜(Ichthyosaurs)や、体長25mを超えるクジラなどに進化しました。

中でも極端な形態に進化したのが、非常に長い首と4つの大きなヒレを持つ「首長竜(Plesiosauria)」です。

魚竜やクジラの体は、水中の抵抗力が少ない流線型をしており、すばやい泳ぎに適した体型をしていました。

一方の首長竜は、胴体から伸びる長い首が強い抵抗力を生み、水中での動きを鈍くしていたと考えられます。

中でも、エラスモサウルスには、首の長さが6メートルにも達するような種までいたという。

本研究で作成した首長竜や魚竜、クジラ類の3Dモデル
本研究で作成した首長竜や魚竜、クジラ類の3Dモデル / Credit: S. Gutarra Díaz et al., Communications Biology(2022)

これまで、首長竜たちの遊泳効率に、体型やサイズがどのように影響するかは明らかになっていませんでした。

そこで研究チームは、首長竜・魚竜・クジラ類の化石をもとに様々な3Dモデルを作成し、体型やサイズが遊泳効率に与える影響を調べる、フロー(流体)シミュレーションを実施

その結果、首長竜は、確かに魚竜やクジラ類より強い抵抗力を受けていたものの、遊泳効率は予想されたよりずっと高いことがわかりました。

3Dモデルの周囲に発生する流体速度を比較しても、首長竜の遊泳スピードは、決して魚竜やクジラ類より遅いものではなかったのです。

モデル周囲の色が流体速度を示す(青ほど遅く、赤ほど速い)
モデル周囲の色が流体速度を示す(青ほど遅く、赤ほど速い) / Credit: S. Gutarra Díaz et al., Communications Biology(2022)
首長竜の3Dモデルと流体速度
首長竜の3Dモデルと流体速度 / Credit: S. Gutarra Díaz et al., Communications Biology(2022)

特に、グループ間に見られる抵抗力の差は、体型ではなくサイズを考慮すると、有意なものではなくなりました。

首長竜は、極端な形態(長い首)によって生じる抵抗力を、体の大きさでカバーしていたのです。

体が大きいと、その分だけ筋肉量も増え、抵抗力を補うだけの体力や遊泳スピードを得られたと考えられます。

研究主任のスサナ・グタラ・ディアス(Susana Gutarra Díaz)氏は、この結果について、「水生生物の遊泳効率を決定するのは、体型よりサイズである」と述べています。

次にチームは、首長竜の中でも特に首の長いエラスモサウルスについて、詳しく調査しました。

すると、首の長さと胴体の大きさに関して、とても興味深い結果が出ています。

次ページ首の長さは「胴体の2倍」が限度

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