水処理膜の目標は「アクアポリン」だった
水処理膜の基礎研究において、これまで注目されてきたのは「アクアポリン」でした。
私たち生物の体は細胞が集まってできています。
そしてこれら細胞は、細胞膜に存在する膜タンパク質「アクアポリン」によって水を取り入れています。
アクアポリンには水分子1つがやっと通れるような0.3nm(ナノメートル)の穴が開いており、他のイオンや物質を通さず、水だけを浸透させます。
「アクアポリン」は「水の穴」という意味ですが、まさに名前通りの性質をもっているのですね。
以前から研究者たちは、アクアポリンの高い水透過能と塩除去能に注目しており、これを海水の淡水化に利用できないかと考えてきました。
アクアポリンを模倣した材料を開発することで、高速の淡水化が可能になると考えたのです。
数々の研究が行われてきましたが、現段階では、アクアポリンの性能を大きく超える材料の開発には至っていません。
そこで伊藤氏ら研究チームは、アクアポリンから離れて、別のアプローチを取ることにしました。