超高速水透過と脱塩を両立するフッ素化ナノチューブ
超高速水透過と脱塩を両立するフッ素化ナノチューブ / Credit:伊藤 喜光(東京大学)ら_水を超高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素ナノチューブを開発 —次世代超高効率水処理膜の実現に向けて—(2022)
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水を高速で通すのに”塩は通さない”「フッ素化ナノチューブ」を開発! (2/2)

2022.05.17 Tuesday

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アクアポリンの4500倍の速度で水を通す「フッ素化ナノチューブ」

テフロン表面のようにフッ素で内壁を覆う
テフロン表面のようにフッ素で内壁を覆う / Credit:Depositphotos

研究チームは、「穴の内壁がをはじくテフロン(フライパンの表面加工などに用いられる)だったなら、水の透過性はどうなるだろうか」と考えました。

そしてこの好奇心から派生して研究開発されたのが、今回の「フッ素化ナノチューブ」です。

このナノチューブは、内壁がテフロンのようにフッ素で覆われています。

また穴の大きさは0.9nmとアクアポリンよりもはるかに大きくなっています。

これほど大きな穴だと、塩(NaCl)が容易に通り抜けてしまうように思えますが、実際は通しません。

なぜなら内壁が負電荷で帯電しており、同じく負電荷である塩化物イオンの侵入を許さないからです。

フッ素化ナノチューブの性能はアクアポリンを凌駕する
フッ素化ナノチューブの性能はアクアポリンを凌駕する / Credit:伊藤 喜光(東京大学)ら_水を超高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素ナノチューブを開発 —次世代超高効率水処理膜の実現に向けて—(2022)

さらにフッ素化ナノチューブの内表面には、水分子に働く結合(水素結合)を崩壊させる機能がります。

通常、水はいくつかの分子が結合した状態で存在していますが、このナノチューブに取り込まれるとその結合が失われ、バラバラに分解されてしまうのです。

結果としてチューブ内の摩擦が低減。超高速な水浸透が可能になりました。

フッ素化ナノチューブは、塩を通さずに、水だけを超高速で通すのです。

しかも水浸透の速度は、多くの科学者が目標にしていたアクアポリンの4500倍になります。

研究チームが目標から離れて別の方法にチャレンジした結果、目標をはるかに凌駕する材料を開発してしまったのです。

仮に、フッ素化ナノチューブを同一方向に並べた膜をつくれるなら、他を圧倒する次世代の水処理膜が生まれることでしょう。

今後の進展に大きな期待を抱けます。

素早い海水の淡水化によって、世界の飲料水不足が解決する日は近いのかもしれません。

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