アクアポリンの4500倍の速度で水を通す「フッ素化ナノチューブ」
研究チームは、「穴の内壁が水をはじくテフロン(フライパンの表面加工などに用いられる)だったなら、水の透過性はどうなるだろうか」と考えました。
そしてこの好奇心から派生して研究開発されたのが、今回の「フッ素化ナノチューブ」です。
このナノチューブは、内壁がテフロンのようにフッ素で覆われています。
また穴の大きさは0.9nmとアクアポリンよりもはるかに大きくなっています。
これほど大きな穴だと、塩(NaCl)が容易に通り抜けてしまうように思えますが、実際は通しません。
なぜなら内壁が負電荷で帯電しており、同じく負電荷である塩化物イオンの侵入を許さないからです。
さらにフッ素化ナノチューブの内表面には、水分子に働く結合(水素結合)を崩壊させる機能がります。
通常、水はいくつかの分子が結合した状態で存在していますが、このナノチューブに取り込まれるとその結合が失われ、バラバラに分解されてしまうのです。
結果としてチューブ内の摩擦が低減。超高速な水浸透が可能になりました。
フッ素化ナノチューブは、塩を通さずに、水だけを超高速で通すのです。
しかも水浸透の速度は、多くの科学者が目標にしていたアクアポリンの4500倍になります。
研究チームが目標から離れて別の方法にチャレンジした結果、目標をはるかに凌駕する材料を開発してしまったのです。
仮に、フッ素化ナノチューブを同一方向に並べた膜をつくれるなら、他を圧倒する次世代の水処理膜が生まれることでしょう。
今後の進展に大きな期待を抱けます。
素早い海水の淡水化によって、世界の飲料水不足が解決する日は近いのかもしれません。