あくびの伝染で「警戒心」と「運動同調性」がアップ!
ギャラップ氏は、その答えが過去の文献に隠されていると考え、あくびに関する先行研究を調査しました。
多くの研究を参照する中で、ある一つの説明モデルが浮かび上がっています。
それは、集団間であくびを伝染させることで、周囲の危機に対する警戒心を促し、さらに運動同調性を高めて、仲間の逃走(あるいは闘争)力を上げるという説です。
その具体例として、氏はマカクザルを用いた2021年の研究をあげています。
この実験では、ある個体があくびをして、それが近くの個体に伝染した場合としなかった場合を比較しています。
まず、伝染しなかった場合、マカクザルに危険な存在であるヘビの画像を見せると、警戒心は上がるものの、個体間の運動同調性に変化はありませんでした。
一方、あくびが伝染した場合、警戒心が上がると同時に、個体間の運動同調性も高まったのです。
それから、同じく昨年の研究として、人を対象とした実験も例にあげています。
ここでは被験者に、他人があくびをする映像を見せた後、脅威的刺激であるヘビや脅威的でないカエルを含む一連の画像を提示しました。
そして、他人のあくびを見なかった場合とで、画像への反応速度に違いが出るかを検証。
その結果、あくびを見た被験者では、カエル(安全な存在)に対しての反応は変わらなかったものの、ヘビ(危険な存在)を識別・検出する能力が急速に向上したのです。
これらの研究結果は、仲間や他人のあくびを見ると、周囲への注意力および、仲間と協力して逃げる(闘う)能力が高まることを示唆します。
つまり、あくびは「身近な危機に対して準備せよ」という仲間からのサインなのかもしれません。
しかし、本研究の成果はまだ、先行文献から導き出した仮説の段階にとどまっています。
これまでの一般的な印象と比べると、あくびと警戒感はまるで無縁の真逆な行為に思えますが、実際のところはどうなのでしょうか?
チームは今後、さらなる研究を進めることで、あくび行動が持つ社会的役割や集団を変化させる能力を解明できると考えています。