新種のベアドッグは1200万年前のフランスに生息
新種の化石は、1993年に、フランス南西部のピレネー=アトランティック県にある小さな集落「サルスピス(Sallespisse)」で発見されました。
見つかったのは、歯を含む下顎の部分で、約1280万〜1200万年と推定される堆積物から回収されています。
本研究チームが注目したのは、他のアンフィシオン種には見られない歯並びの良さと第4小臼歯があったことです。
これらは種の特定にとって重要な箇所であり、分析の結果、未記載の新種であることが判明しました。
先述したように、学名は、バスク神話に出てくる一つ目巨人・タルタロ(Tartaro)から「タルタロシオン(Tartarocyon)」と命名されました。
タルタロは、化石が見つかった地域でも有名な神話上のモンスターであり、山奥の洞窟に住み、羊や若者を捕らえて食べると伝えられています。
化石が見つかった場所はピレネー山脈の北端に位置するため、タルタロシオンも神話の魔物と同じように山を徘徊し、見つけた獲物を食べていたかもしれません。
タルタロシオンの推定体重は約200キロに達し、クマのような力強い四肢と、イヌのような鋭い歯で獲物を捕食していたと考えられます。
また、研究主任のバスチアン・メヌカート(Bastien Mennecart)氏いわく、1300万〜1100万年前にピレネー山脈(スペインとフランスの境に位置)周辺に生息していた陸生脊椎動物の化石が見つかるのはきわめて珍しいとのこと。
タルタロシオンのより詳細な調査と、同地でのさらなる化石発掘によって、当時のヨーロッパにおけるベアドッグの、ひいては大型哺乳類の進化について、理解を深められるかもしれません。