「第6の指」は600万年前にはすでに存在していた!
研究チームは今回、ジャイアントパンダの祖先である「アイルラルクトス(Ailurarctos)」の手首の骨を調べました。
この化石標本は、中国南部・雲南省の昭通市(しょうつうし)で発見されたもので、年代は約600万〜700万年前の後期中新世にさかのぼります。
チームは、手首の骨の形やサイズを、現生するジャイアントパンダの「第6の指」、科学的な正式名称は「橈側種子骨(とうそくしゅしこつ、radial sesamoid)」と比較しました。
また、これと別に、約900万年前に生息し、ジャイアントパンダとの共通祖先と目される古代グマ「インダルクトス・アルクトイデス(Indarctos arctoides)」の骨とも比較分析しています。
その結果、アイルラルクトスの手首に、ジャイアントパンダの橈側種子骨とよく似た突起構造が特定されたのです。
一方で、古代グマの方には、それに当たる突起構造が見られませんでした。
このことから、今日のパンダに見られる第6の指は、少なくとも600万年前には進化していたと推測できます。
研究主任のワン・シャオミン(Xiaoming Wang)氏は、こう指摘します。
「ジャイアントパンダの祖先は、肉やベリー類を食べる雑食から、栄養価は低いものの、豊富に手に入る竹を主食とする方向へシフトしました。
このとき、竹をしっかりとグリップするために、手首から第6の指が進化したのです。
そして今回の結果から、パンダの祖先は、600万年前にはすでに竹を主食とする食性へと進化したことが伺えます」
他方で、現代のジャイアントパンダとアイルラルクトスの第6の指には、サイズと形状に違いが見られました。
ジャイアントパンダの第6の指は、アイルラルクトスよりかなり短く、ずんぐりとしていて、外側の表面が平らになっていたのです。
これについて、ワン氏は「指の短さと平らな外面は、4つ足で歩くときの体重配分を助けるために、長い時間の中で変化したものでしょう」と指摘します。
つまり、第6の指は、竹をつかむことの他に、歩行時の体重を支える機能としても用いられたのです。
この二重の機能が、ジャイアントパンダの第6の指のサイズや形を制限する要因となったようです。
パンダは、肉食の祖先から進化して、純粋な竹食へと進化する中で、多くの障害を乗り越えなければなりませんでした。
「第6の指」の発明は、それらのハードルをクリアして、環境に適応するための驚くべき偉業だったのかもしれません。