さそり座を観測するときのポイント
δ(デルタ)星「ジュバ」の明るさにも注目
「ジュバの明るさは2.3等」と先述しましたが、実はジュバは変光性で、明るさが変わります。2003年には1.6等と「もうすぐ1等星」のところまで明るくなったのだそう。
しかし、2005年頃から減光し、しばらくは2.0等から2.4等くらいを変動したものの、2010年頃から再び1.8等くらいまで明るくなったそうです。
ジュバは「カシオペヤ座γ(ガンマ)型変光星」で、赤道周囲に高速で回転するガスの円盤を持っており、物質の流出のために光度が変化します。
また、星は独立しているように見えても、実際は数個の星がお互いに引力を及ぼし合って、共通の重心の周囲を公転運動している場合があり、これを連星といいます。
ジュバは「カシオペヤ座γ(ガンマ)型変光星」であるとともに連星でもあります。太陽の質量の約13倍もある主星の周りを太陽の質量の約8倍の伴星がまわっているのだとか。
その軌道は非常に細長い楕円形なのですが、これまでにジュバが明るくなったのは伴星が主星の近く、近星点を通過したときなのだそう。
今年2022年の4月下旬にも、ジュバの伴星が近星点を通過すると予想され、増光が期待されました。
ということで、今回の星食ではその明るさも気にかけてみましょう。
さそり座豆知識
最後に、さそり座の観察の際にちょっと話したくなる話題をご紹介。
現代の日本では星座というと北斗七星などの一部をのぞき、国際天文学連合が策定した、88種が一般的です。
でも、さそりってもともと日本にはいない生き物ですよね? さそり座を見て、昔の日本人は何をイメージしていたのでしょうか?
日本では、各地でさそり座のS字の形状を「つりばり」に見立てていました。広島や香川の瀬戸内海地方では「うおつりぼし(魚釣り星)」、能登では「つりぼし(釣り星)」という和名が残っていますし、沖縄でも「イユチーャブシ(魚釣り星)」と呼んでいたそう。
星座が生まれた古代メソポタミアでは、さそりが身近な存在ですが、日本は海で魚をとることが馴染み深く、星座の名前に反映されたわけですね。
ほかには、広島における「ヤナギボシ」など、ヤナギにも見立てられたそうです。
日本ならではの呼び方から星座の姿を描き直すと風情を感じられて、違った気分で星を見られるかもしれません。
今年は例年にない星が見られるチャンス
さて、星食自体は毎年けっこうな頻度で起こっているのですが、2等星くらいの明るさの恒星が星食になるのは稀です。
それに、今年は梅雨明けが早かったですね。例年なら、今の時期に珍しい天文現象があってもほとんど見られませんでしたが、今年は見られる可能性が高いです。
せっかくのチャンスなので、さそり座の額の星が月に隠される様子を見てみてください。