スペースデブリへの対策にはどんなものがある?
スペースデブリについては、すでに多くの対策が考案されています。
たとえば、ロボットアームを使ってデブリを把捉し、回収する方法です。
しかし、デブリは宇宙空間をゆっくりと漂っているのではなく、弾丸の7倍という猛スピードで移動しています。
そのため、下手に捕まえようとすると、ロボットの方が破損して、さらなるデブリを生み出しかねません。
そこで専門家が考えているのは「トラクタービームでデブリを吸い寄せる」という方法です。
これは、米ユタ大学(University of Utah)の機械工学者、ジェイク・アボット(Jake Abbott)氏の発案によるもので、磁石の渦電流(うずでんりゅう)を利用します。
簡単に説明しますと、ロボットアームの先に磁石を取り付け、それを高速回転させることで渦電流を生成。
その磁場を使って、デブリを吸い寄せて回収するというものです。
あとはエンジニアリングの問題で、「実際に作ることができれば、実用化は可能だ」とアボット氏は話します。
他の案としては、使用済みのロケットをその場で放棄するのではなく、地球に帰還させる方法があります。
その場合、ロケットを制御しながら大気圏に再突入させるには、高度な技術を要するとともに、それを実現させるためのコストもかさみます。
そうなると、「デブリの落下により破損した家屋や建物に損害賠償を払う方が、安上がりになる」という意見もあるほどです。
しかし、家屋ならまだしも、人命が失われてしまってからでは遅いでしょう。
それゆえ、ブリティッシュコロンビア大の研究チームは「使用済みロケットの再突入を国際的に義務付ける議論を進めるべきだ」と強く主張しています。
実際、宇宙開発に伴う資材の落下は現実のものとなっています。
記憶に新しい事例としては、2021年5月に、中国の大型ロケット「長征5号B」の残骸が、モルディブ沖のインド洋に落下しました。
また、中国のロケットデブリは、2020年にも西アフリカに落下しており、さらに、今月24日に再び打ち上げられた「長征5号B」が、すでに制御不能の状態に陥り、数日内にも地上に落下すると見積もられています。
制御できなくなったスペースデブリが地上に被害をもたらすという考えは、もはや杞憂とは呼べない問題のようです。
本当に人命が失われる前に、なんらかの対処を考えていく必要があるでしょう。