赤道に近い地域で落下リスクが増大?
今回の研究では、使用済みになった制御不能のロケットの破片が、地上に落下して死傷者を出す確率が調べられました。
まず、地球軌道上におけるロケット部品の傾きや軌道、その下方(地上)の人口密度などを数学的にモデル化。
さらに、過去30年分の衛星データを用いて、破片が地上のどこに落下する確率が高いかを推定しました。
その結果、今後10年で破片が地球に再突入する確率は、全体としては低いものの、北半球の北部地域より、赤道に近い地域で落下リスクが高くなることが示されました。
具体的には、インドネシアのジャカルタ、バングラデシュのダッカ、ナイジェリアのラゴスなどが位置する緯度は、アメリカのニューヨーク、中国の北京、ロシアのモスクワに比べて、デブリの落下する確率が3倍高いと試算されています。
これは、人工衛星やロケットの大半をアメリカ、中国、ロシアが打ち上げていることを踏まえると、皮肉な結果です。
またチームは、1回のデブリの落下が10平方メートルの範囲に致命的な打撃を与えると仮定した場合の、人命へのリスクである「死傷者予想値」も算出。
すると、今後10年間で平均1人以上の死傷者が出る確率は10%であることがわかりました。
「10%なら心配には及ぶまい」と過小評価してはなりません。
研究者によると、1957年の人類初の人工衛星・スプートニク1号の打ち上げ以来、デブリ落下による死者が1人も出ていないことを考えれば、今後10年で被害の確率が10%は非常に高い数値だ、と指摘します。
これまで、スペースデブリが地上(あるいは大気圏内の航空交通)に害を及ぼす可能性は無視できると判断されてきました。
しかし、人工衛星やロケットの打ち上げ増加にともない、宇宙と地上の双方における事故発生率も年々高まっているのです。
したがって、「10%という数字はかなり保守的な見積もりである」と研究者は警告しています。