秘密の買い物をした罪悪感から、パートナーに優しくなる
フィッツサイモンズ氏によると、今回の研究は、共同研究者である米コネチカット大学(UConn)のダニエル・ブリック(Danielle Brick)氏から聞いた話がきっかけで始まったといいます。
ブリック氏は、ある日、同僚の女性が仕事を早く切り上げて、自宅を散らかしに帰るという奇怪な話を聞いて、そのわけを聞きました。
すると彼女は「夫に内緒で自宅の清掃サービスを利用したことを知られたくなかったので、痕迹を消すために、あえてこの策略を立てた」と話したのです。
フィッツサイモンズ氏は、これを笑い話として聞いたものの、ふと「パートナーに秘密の消費行動をしている人は意外と多いのではないか」と考えました。
加えて、その秘密の消費行動が、パートナーとの関係性にどのような影響を与えるかについても興味を抱きました。
そこで、フィッツサイモンズ氏とブリック氏は、異なる参加者グループを対象とした5つのアンケート調査を実施。
最近の「秘密の消費行動(SCB、secret consumer behaviors)」の有無や、パートナーに内緒にする理由、その後のパートナーに対する行動や対応の変化について、詳しく回答してもらいました。
その結果、参加者の10人に9人が、直近の数日間で「秘密の消費行動」を少なくとも1回はしていることが判明したのです。
調査の1つを例にとると、119組のカップル(合計238人、平均年齢40.5歳)のうち、ほぼ9割(213人、89.5%)が、秘密の消費行動を告白しました。
最も多かったのは、飲食関係で40.0%(95人)、次いでファッション関係が10.1%(24人)、同じく個人の趣味関連が10.1%(24人)、残りは知人への贈り物が8.0%(19人)、健康・美容関連が6.3%(15人)、家事代行が3.36%(8人)と続きました。
具体的な消費行動の例としては、「パートナーがいない間にタバコを1〜2本吸う」「1カ月の食費の余りをこっそり自分のために使う」「夫に内緒で新しい服を買う」などが挙げられています。
また、パートナーに内緒にする理由は様々で、たとえば飲食であれば、「ダイエット中の妻/夫の前で間食は食べれない」「揉め事を避けたい」と回答されました。
その一方で、秘密の消費行動は当人に罪悪感を抱かせ、その後、パートナーにプラスになるような行動を増加させることが明らかになりました。
たとえば、普段はしないマッサージをしたり、夕食の皿洗いを手伝ったりと、パートナーを気遣う行動が増えていたのです。
このことから、秘密の消費行動は、最終的に、パートナーとの関係性にプラスの働きをしている可能性が高いと考えられます。
こうした事例を見ると、単純に浮気している場合にも、罪悪感からパートナーに優しくして関係が良好になりそうな気もします。
しかしフィッツサイモンズ氏は、これまでの先行研究をもとに「婚外恋愛(不倫)といった、より深刻な秘密行為に関しては、今回と同じ効果は生まれない」と指摘しています。
(おそらく、不倫関係の場合、パートナーからすでに気持ちが離れているか、あるいは、何も悟られないよう普段通りを装うために、パートナーに優しくしようとする行動変化が起きにくいのかもしれません)
今後は、こうした罪悪感による行動変化が、実際にパートナーとの関係性をどれほど良好にしているかが確かめられるべきでしょう。
ちなみに、フィッツサイモンズ氏は、大のワイン好きであり、自身も奥さんに内緒でたまにワインを大人買いしていることを認めています。
しかしある時、ワイン18ケースを買って、いつもの隠し場所に移しているところを奥さんに見つかり、こっぴどく叱られたとか。
なのでフィッツサイモンズ氏は、今回の研究結果を奥さんに知ってもらって、許してもらいたいと考えているそうです。