ギニア海岸沖に「幅10キロのクレーター」を発見!
今回のクレーターは、白亜紀における南米〜アフリカの地殻変動を解明する大規模プロジェクトの一環として発見されました。
用いられたのは「反射法地震探査」です。
この方法は、超音波と同じように、海底に弾性波を当て、反射して戻ってくるエネルギーを検出します。
そのデータをもとに反射記録断面を作成することで、海底の岩石や堆積物の形状および構造だけでなく、物性まで明らかにすることが可能です。
研究チームは、2020年末、取得されたデータを調べている最中に、非常に珍しい地形に出くわしました。
西アフリカ・ギニアの海岸沖にある平坦な堆積物の下に、直径約10キロ、高さ数百メートルに及ぶクレーターらしきものが埋まっていたのです。
そのサイズ、直径と深さの比率、外縁部の高さなど、あらゆる点が、隕石落下により生じるクレーターの特徴と一致していました。
また、クレーターの外側に「イジェクタ(ejecta)」と呼ばれる堆積物も見つかっています。
イジェクタとは、地表に隕石が衝突した際に発生する散乱物です。
クレーターは、近くにある海底火山の名前から「ナディール(Nadir)」と命名されました。
チームは次に、ナディールの特徴からコンピューターモデルを生成し、隕石衝突時に起こったプロセスを再現しました。
ナディールから推計される隕石の直径は約400メートルで、これが秒速20キロのスピードで、水深800メートルの海洋に衝突した場合をシミュレート。
(ちなみに、チクシュルーブの隕石は直径10〜15キロとされているので、それに比べると、ナディールはかなり小粒です。ただし、衝突スピードは同じ秒速20キロ)
その結果は劇的なものでした。
まず、衝突ポイントの水や海底の堆積物、そして隕石自体が一瞬にして蒸発し、巨大な火球を発生させます。(火球は数百キロ離れた場所からでも十分見えた可能性がある)
衝撃波はマグニチュード6.5〜7の地震に相当し、強烈な爆風と津波を引き起こしました。
その際に放出されたエネルギーは、最近起こったトンガ大噴火の1000倍以上に達したと見られます。
一過性の凹型クレーターができたあと、衝撃のリバウンド効果で、地底の黒色けつ岩層(Black Shales、上図の黒い層の部分)が急激に隆起します。
衝突前に比べて、最大400メートル盛り上がり、凸型のクレーター痕跡を形成しました。
そして、そのあとを周囲の堆積物が埋め合わせ、上部を再び海が覆ったと考えられます。
こちらの動画は、隕石衝突時のダイナミズムを再現したものです。
研究チームは、こうしたクレーターを生成する他の要因として、海底火山の崩壊、地下に溜まったガスの爆発的な放出、海底下のダイアピール(地下深部からの上昇作用によって、ドーム状の地質構造ができる現象)なども検討。
しかし、これらの仮説はいずれも、現状のクレーターの特徴と一致しませんでした。
このことから、ナディール・クレーターは隕石の落下により生じた可能性が最も高いと結論されました。