狩りを始めるときは、必ず「2番目の腕」から
研究チームは今回、「カリフォルニア・ツースポットタコ(学名:Octopus bimaculoides)」という種類を対象に実験を行いました。
このタコは、名前に”ツースポット(2つの点)”とあるように、頭部の両側に青い斑点が一つずつ付いており、簡単に見分けることができます。
平均で2年ほど生き、サイズはテニスボール大まで成長します。
本研究では、タコの中心の2本の腕から左右に1・2・3・4(左右合わせて計8本)と番号を振りました。
次に、タコの入っている水槽にカニやエビなど様々な種類の生き餌を投入し、タコがどのように狩りをするかをカメラで記録します。
事前の予想では、カニはゆっくりと動き、エビは尻尾を使って素早く逃げるため、獲物の種類によって異なる狩猟戦略が必要になると考えられました。
そして観察の結果、研究チームは。以下のような”狩りの傾向”を発見しました。
・タコは巣穴に隠れて、常に片目だけを水中側に向けているが、獲物を発見すると、その目と同じ側の腕を使っていた
・その腕はどんな種類の獲物であれ、必ず真ん中から2番目の腕が優先されていた
・動きの遅いカニを捕らえるときは、2番目の腕をリードしながら、ネコのようにそろりと近づきつつ、急に飛びついていた
・動きの速いエビを捕らえるときは、獲物に気づかれないよう、より慎重に行動し、2番目の腕で飛びかかった後、その隣の1番目と3番目の腕でエビが逃げないようサポートしていた
こちらは、エビを捕らえるときの様子です。
研究主任の一人であるフラビー・ビデル(Flavie Bidel)氏は、タコが中心から2番目の腕を使って狩りを開始するのが、かなり確実に予測可能であったことに衝撃を受けています。
「タコの動きは一見、予測できないように見えるのですが、狩猟行動に関しては非常に再現性(=2番目の腕で狩りをスタートする)が高かったのです」
このことから、タコには、狩りに特化した”利き腕”が存在すると結論できます。
研究チームは次のステップとして、「タコの神経細胞が8本の腕をどのように制御しているかを明らかにしたい」と述べています。
というのも、8本の腕は解剖学的には共通しており、一見すると違いがないように見られるからです。
しかし、特定の行動に特定の腕を優先して使うのであれば、そこには何らかの進化的適応が反映されていると考えられます。
研究主任のトレヴァー・ウォーディル(Trevor Wardill)氏は「こうしたタコの腕の使い方をより深く理解することで、次世代の高度操作型ソフトロボットを開発するための一助となるでしょう」と述べています。