沖縄にも生息するアイザメ科の一種か?
正体不明のサメは、今月12日、トラップマン・バーマグイ(Trapman Bermagui)という名前で活動している釣り師の男性により、オーストラリア南東・ニューサウスウェールズ沖の水深約650メートルから釣り上げられました。
その後、バーマグイ氏が自身のFacebookにサメの画像を掲載したことで、一気に世界中の人々の注目を集めています。
コメント欄では、このサメがどの種に属するかについて、様々な推測が寄せられました。
その中で最も多かったのは、ダルマザメ(学名:Isistius brasiliensis)です。
ダルマザメは、世界中の熱帯〜亜熱帯エリアの深海に分布しており、確かに今回のサメと同じように、大きなギョロ目を持っています。
しかし、歯や顔の形など、その他の形態的特徴から、バーマグイ氏は「明確にダルマザメではない」と断言しています。
バーマグイ氏が候補として挙げるのは、深海ザメの一グループであるアイザメ科のオキナワヤジリザメ(学名:Centrophorus moluccensis)です。
アイザメ科は現在、アイザメ属(Centrophorus)とヘラツノザメ属(Deania)の2属、計18種が知られており、世界各地の深海に生息しています。
オキナワヤジリザメは、その名の通り、沖縄近海に分布し、今回発見されたオーストラリア近海にも存在します。
形態的な特徴も多くの点で似ていますが、引き揚げられたサメのような出っ歯ではありません。
しかし、この歯が釣り上げられるときの衝撃で飛び出ただけだとしたら、オキナワヤジリザメは候補としてかなり有力です。
一方で、サメ専門家の中には、これに賛同できないとする声も多数見られました。
たとえば、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校(CSULB)にあるサメ研究所のクリストファー・ロウ(Christopher Lowe)所長は「オーストラリア沖で知られる深海性のヨロイザメ(学名:Dalatias licha)ではないか」と指摘します。
ヨロイザメも確かに、黒い皮膚と大きな目を持っていますが、ロウ氏は「標本の全体像を見ない限り、断定はできない。これまで見たことのない新種の可能性もある」と付け加えています。
他にも、オンデンザメ科に属するユメザメ(学名:Centroscymnus owstonii)や、カラスザメ科(Etmopteridae)の一種ではないかという指摘がありま下が、明確な答えは出ていません。
それでも、一部の専門家の間では「おそらく、バーマグイ氏の見解が正しい」とする意見があります。
ニュージーランド国立水・大気研究所(NIWA)の海洋生物学者で、深海ザメを専門とするブリット・フィヌッチ(Brit Finucci)氏は「これはアイザメ科に属する可能性が高いでしょう」と話します。
「アイザメはかつて、ニューサウスウェールズ沖で肝油を得るため、積極的に漁獲されていました。
しかし、漁業による乱獲の結果、いくつかのアイザメ種はオーストラリアで絶滅の危機に瀕しており、保護対象となっています」
今回発見されたサメは、何らかの理由で損傷したアイザメと考えるのが妥当のようです。