相手に合わせて同調笑いできる会話ロボット「ERICA」
研究チームは、相手に合わせて同調笑いできる自律型アンドロイド「ERICA」を次の手順で開発しました。
まず、初対面の男女による82の会話データから、同調笑いが生じた箇所とそうでない箇所を抽出。
次に、同調笑いが生じた箇所について、その同調笑いが「大笑い」か「社交的な笑い」のいずれであるか判定しました。
最後に、このデータを用いて同調笑いのモデルを作成し、会話ロボットであるERICAに統合しました。
このモデルでは、話し相手が発話した際の音声的な特徴から、①相手が笑ったか、②自分も笑うか、③自分が笑う場合にはどのように笑うか(大笑いか、社交的な笑いか)を判定します。
例えばERICAは、相手の社交的な笑いには社交的な笑いで返し、大笑いには大笑いで返します。
また相手が失敗談などで自嘲気味に笑う場合には、ERICAは笑わないようにします。
では、同調笑いできるERICAは「人間らしい」会話を生み出せるのでしょうか?
研究チームはERICAの機能を評価するために、ERICAとの対話音声を作成し、130名以上の第三者に聴取してもらいました。
比較対象として、「ERICAが全く笑わないケース」と「相手の笑いに反応してERICAが常に笑うケース」も用意しました。
その結果、ERICAの適切な同調笑いによって、「ロボットによる共感」、および「ロボットの人間らしさ」といった項目に対する評価が向上しました。
井上氏も「初めて一緒に笑ってくれたときは、まるで心が通じ合ったように感じました」と、ERICAの人間らしさを評価しています。
ERICAのように、適切な同調笑いができるロボットが開発されたのは、世界で初めてのことです。
とはいえ、ERICAは相手の音声的な特徴に基づいて判断を下しているため、「笑いの意味を理解した」わけではありません。
このような高度な理解をロボットに与えることは、今後の大きな課題です。
それでも、今回のような同調笑いの獲得は、自然に笑う人間らしいロボットを開発するうえで、これから大いに役立つことでしょう。