相手に合わせて同調笑いする会話ロボット「ERICA」
相手に合わせて同調笑いする会話ロボット「ERICA」 / Credit:井上 昂治(京都大学)_人と一緒に笑う会話ロボットを開発―人に共感し、人と共生する会話AIの実現に向けて―(2022)
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愛想笑いできるロボットを開発 共感によって人間らしさを獲得

2022.10.03 17:00:28 Monday

会話AIを搭載したロボットに求められるのは、「人間らしさ」です。

いくら言葉の選択が適切に行われても、それが人間らしさを感じない無機物では、会話と感じることは難しいでしょう。

京都大学大学院情報学研究科に所属する井上 昂治(いのうえ こうじ)氏ら研究チームは、人間らしい反応の1つである「同調笑い」を会話ロボットにもたせることに成功しました。

私たちのさまざまな笑いに合わせて、適切な笑いを選択して返してくれるのです。

研究の詳細は、2022年9月15日付の科学誌『Frontiers in Robotics and AI』に掲載されました。

人と一緒に笑う会話ロボットを開発―人に共感し、人と共生する会話AIの実現に向けて― https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2022-09-29-3
Can a robot laugh with you?: Shared laughter generation for empathetic spoken dialogue https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frobt.2022.933261/full

人間らしいコミュニケーションには「笑いによる共感」が必要

AI技術やロボット技術の向上により、人間とロボットの共生に期待が高まっています。

映画や漫画などに登場する「まるで人間みたいなロボット」に少しずつ近づいているのです。

特に少子高齢化が進む現代社会では、会話ロボットに大きな期待がかかっています。

無機質なロボットを「人間らしく」するには「自然な会話スキル」が必要
無機質なロボットを「人間らしく」するには「自然な会話スキル」が必要 / Credit:Canva

しかし私たちが日々のコミュニケーションで実感しているように、心温まる会話を成立させるのは簡単ではありません。

人間特有の繊細な技術が必要なのです。

例えば、スムーズで自然な会話をするには、話すこと、黙っていること、相づち、質問、表情、アイコンタクトなどを、適切な仕方で織り交ぜることが大切です。

特に話を聞く側であれば、話している相手に共感していることを振る舞いで表現する必要があるでしょう。

研究チームは、その1つである「同調笑い」に着目しました。

同調笑いとは、相手の笑いに合わせて自分も笑うことです。

私たち人間は無意識のうちに同調笑いをしており、これによって「心を通わせている」という温かさや安心感が得られているのです。

適切な同調笑いによって共感を表せる
適切な同調笑いによって共感を表せる / Credit:Canva

しかし同調笑いは非常に難しいスキルです。

例えば、自分が少し笑ったときに相手が爆笑すると、嬉しいと感じるよりも困惑するものです。

また自分の失敗を自嘲気味に笑ったとき、相手が同じように笑うと、馬鹿にされているようで、イライラしたりショックを受けたりします。

かといって、自分の笑いに相手が全く反応してくれないなら、「話を聞いていないのだろうか」「楽しくないのか」と不安になってしまうでしょう。

つまりロボットに人間らしさをもたせるには、相手に合わせて変化する高度な同調笑いが必要なのです。

そこで研究チームは、会話ロボットに高度な同調笑いを導入できるか取り組むことにしました。

相手に合わせて同調笑いできる会話ロボット「ERICA」

自律型アンドロイド「ERICA」
自律型アンドロイド「ERICA」 / Credit:井上 昂治(京都大学)_人と一緒に笑う会話ロボットを開発―人に共感し、人と共生する会話AIの実現に向けて―(2022)

研究チームは、相手に合わせて同調笑いできる自律型アンドロイド「ERICA」を次の手順で開発しました。

まず、初対面の男女による82の会話データから、同調笑いが生じた箇所とそうでない箇所を抽出。

次に、同調笑いが生じた箇所について、その同調笑いが「大笑い」か「社交的な笑い」のいずれであるか判定しました。

最後に、このデータを用いて同調笑いのモデルを作成し、会話ロボットであるERICAに統合しました。

このモデルでは、話し相手が発話した際の音声的な特徴から、①相手が笑ったか、②自分も笑うか、③自分が笑う場合にはどのように笑うか(大笑いか、社交的な笑いか)を判定します。

同調笑いのイメージ
同調笑いのイメージ / Credit:井上 昂治(京都大学)_人と一緒に笑う会話ロボットを開発―人に共感し、人と共生する会話AIの実現に向けて―(2022)

例えばERICAは、相手の社交的な笑いには社交的な笑いで返し、大笑いには大笑いで返します。

また相手が失敗談などで自嘲気味に笑う場合には、ERICAは笑わないようにします。

では、同調笑いできるERICAは「人間らしい」会話を生み出せるのでしょうか?

研究チームはERICAの機能を評価するために、ERICAとの対話音声を作成し、130名以上の第三者に聴取してもらいました。

比較対象として、「ERICAが全く笑わないケース」と「相手の笑いに反応してERICAが常に笑うケース」も用意しました。

その結果、ERICAの適切な同調笑いによって、「ロボットによる共感」、および「ロボットの人間らしさ」といった項目に対する評価が向上しました。

井上氏も「初めて一緒に笑ってくれたときは、まるで心が通じ合ったように感じました」と、ERICAの人間らしさを評価しています。

ERICAのように、適切な同調笑いができるロボットが開発されたのは、世界で初めてのことです。

とはいえ、ERICAは相手の音声的な特徴に基づいて判断を下しているため、「笑いの意味を理解した」わけではありません。

このような高度な理解をロボットに与えることは、今後の大きな課題です。

それでも、今回のような同調笑いの獲得は、自然に笑う人間らしいロボットを開発するうえで、これから大いに役立つことでしょう。

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