ミイラ化した皮膚を残す化石標本「ダコタ」を調査
本研究では、ノースダコタ・ヘリテージ・センター&州立博物館(North Dakota Heritage Center & State Museum)に収蔵されている、アヒル口の草食恐竜「エドモントサウルス(Edmontosaurus)」の化石を調査対象として用いました。
この化石標本は、1999年に、米最北部ノースダコタ州にあるマーマース近郊の牧場で発見され、「ダコタ(Dakota)」という愛称が付けられています。
ダコタは、約6700万年前の白亜紀末のもので、非常に保存状態がよく、ほぼ全身にわたる骨格の他に、右前足、左後足、尾の付け根のミイラ化した皮膚が残されているのです。
チームの一員で、ノースダコタ州立歴史協会(SHSND)のミンディ・ハウスホルダー(Mindy Householder)氏は「皮膚は全体的に深い茶色をしていますが、化石化の過程で多くの鉄を含んだため、少し光沢があり、光っているようにも見える」と話します。
ダコタの皮膚は、2014年に一般公開されましたが、その時点では、周囲の岩石から完全に取り除かれておらず、詳しい研究ができませんでした。
しかし、2018年に本格的な化石の洗浄が行われたことで、皮膚と骨のいたるところに、何らかの生物による噛み跡が発見されたのです。
そこでチームは今回、現代の哺乳類やヒト遺体の法医学的研究データをもとに、皮膚の噛み跡を分析。
その結果、これらの噛み跡は、古代ワニや小型の肉食恐竜の歯と爪により付けられたものと判明しました。
おそらく、ダコタが死んだ後、その死骸にワニや肉食恐竜が群がり、残された肉を食べたと見られます。
加えて、これらの無数の傷跡は、ダコタの死骸がすぐには地中に埋没せず、しばらくの間、地上に放置された状態にあったことを示唆します。
しかし、「外気にさらされっぱなしの死体は必ず腐敗する」という自然のルールがあります。
それなのに、なぜダコタの皮膚はミイラとして残ったのでしょうか?